人と企業をつなぐ大きな輪をつくる。
東西の展示会で見えた野村不動産のスタンス。
2025年、野村不動産は関東圏・中部圏の要所にそれぞれ物流施設を完成させます。また、テクラムは開発される物流施設エリアを問わず、日本全国からさまざまな企業が参画しています。30年の歴史を持つ関東圏の国際物流総合展(東京ビッグサイト)、そして4年目を迎えたばかりの若い展示会である中部圏のスマート物流EXPO名古屋展(ポートメッセなごや)。今昔の展示会で野村不動産は何を示したのか。今回の記事ではそれぞれの会場の様子をレポートしつつ、弊社のビジョンを明らかにします。
関東の新拠点Landport横浜杉田。
今年で16回目を迎える「国際物流総合展」は、1994年から隔年で開催されてきた歴史ある展示会です。特に今回は532社3220ブースと、過去最大規模での開催となりました。目標数を400以上も上回るブースが出展したことからも、その盛況ぶりがうかがえます。
野村不動産は人の行き来も盛んな東1ホールの出入り口にブースを構え、来場した方々に自社が手掛ける物流施設「Landport(ランドポート)」と、企業間共創プログラム「Techrum(テクラム)」の魅力を発信していました。今年のテーマは「LOVE×LOGI(ラブロジ)」。この言葉には”ただ物流施設を提供するだけではなく、愛を持ってソリューションをお届けする”という想いを込めています。
当日は物流の専門誌「LOGISTICS TODAY」編集長である赤澤裕介氏がブースを訪問。担当者から説明を受けました。
赤澤裕介氏(LOGISTICS TODAY編集長)
今日は野村不動産のブースにおうかがいしています。今回は野村不動産の遠国さんにお話を伺いたいと思います。遠国さん、こちらでは何を展示しているんですか。
遠国竜佑氏(野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業企画課)
はい、こちらでは来年新たに竣工する2つの物流施設(Landport)と、企業間共創プログラム(Techrum)の展示をしています。
赤澤氏
こちらにミニチュアがありますね。これは何ですか?
遠国氏
はい、こちらは2025年10月にオープン予定の「Landport東海大府(愛知県名古屋市)」のミニチュアです。近年高まりつつある名古屋エリアの物流施設需要に応える形で設計されました。
Landport東海大府は、野村不動産が手掛けた物流施設のなかでも最大規模のものです。地上6階建て(倉庫5階)、延床面積24万6538平方メートルの規模感はミニチュアからも十分に伝わってきました。伊勢湾岸自動車道「大府IC(インターチェンジ)」、知多半島道路・名古屋高速3号大高線「大高IC」から、それぞれ0.5kmと近く、アクセスが良いことも特徴です。野村不動産はこの巨大物流施設を、中部圏への配送拠点としてのみならず、東西をつなぐ中継地点としても活用してもらいたいと考えています。詳しいことは記事後半のスマート物流EXPO名古屋展レポートにてお伝えします。
赤澤氏
もう1つ、おもしろいミニチュアがありますね。こちらも物流施設ですか?
遠国氏
はい。こちらは2025年3月竣工予定の「Landport横浜杉田(神奈川県横浜市)」です。
赤澤氏
倉庫の中が見えるようになっていますが、これはどうしてですか?
遠国氏
よくぞ聞いてくれました。これは自動倉庫が入る予定の区画をお見せするためのミニチュアなんですよ。なので内側が見えるようになっているんですね。なんとLandport横浜杉田には、はじめから従量課金で使える自動倉庫がついてくるんです!
赤澤氏
利用者側が導入すべき自動倉庫を、野村不動産があらかじめ用意した、ということですか?
遠国氏
その通りです!
Landport横浜杉田にはあらかじめ最大4020パレットを収容可能な自動倉庫がついています。自動倉庫は従量課金制のため、使いたいときに使いたいだけ利用することができます。天井高を目一杯使う自動倉庫は保管効率が高いですが、設置や維持にかかるコストを懸念して導入をためらう企業も少なくありません。その点、Landport横浜杉田の入居者はリスクをとらずに、メリットだけを享受することができます。また従量課金制の自動倉庫は、季節波動の激しい商品と相性抜群です。
地域との融和を大切にしていることも同施設の特徴として、敷地内には地元の名木として知られる「杉田梅」が植えられる予定です。この梅は品種改良がされていない日本古来の梅で、「幻の梅」とも呼ばれる貴重なもの。地元”杉田”の名を冠するこの梅は、まさに地域融和のシンボルといえるでしょう。
さらにLandport横浜杉田は津波発生の際に地域住民の方の避難場所になります。物流というインフラを支えていることから、物流施設は災害に強いつくりをしています。また避難場所としての機能を広く知っていただくため、野村不動産は定期的な防災イベントを開催予定です。
入居者が自由に使える自動倉庫を備え、地域の方々に寄り添うLandport横浜杉田は、まさに野村不動産が目指す「オープン・シェア型物流施設」の典型なのです。
施設のスペックや地域融和への想いについてさらに詳しいことは、既出の記事で存分に紹介しているので、そちらをご覧ください。
Landport横浜杉田、未来を見据えた物流課題への挑戦【前編】
Landport横浜杉田、先進設備で物流課題に挑む【後編】
地元に愛される物流施設をつくりたい、Landport横浜杉田の取り組み
テクラムのソリューションをつなげて物流現場を再現
野村不動産のブースを訪れた赤澤氏は、引き続き遠国氏から企業間共創プログラム「Techrum」の説明を受けました。
赤澤氏
いろいろな機械が展示されていますが、これらの機械は野村不動産とどうつながるのでしょうか。
遠国氏
こちらでは野村不動産が提供する企業間共創プログラム「Techrum」のソリューションを集め、”物流施設でものがどう流れていくか”を再現しています。Techrumは物流課題の解決を目指す会社の連合体のようなものです。野村不動産はTechrumに集まったソリューションの中から、各現場に合ったものをピックアップして、提案します。
赤澤氏
なるほど。マテハン機器を入れるのってすごくお金がかかるんですよね。なので、できれば自社に合ったものを入れたいと思うのは当然のことです。野村不動産は第三者的な立場から複数のソリューションを比較検討し、最適な提案をしてくれるというわけですね。
野村不動産ブースでは、9社のソリューションが展示され、”倉庫内でのものの流れ”が再現されていました。庫内業務の効率化を目指す際には、それぞれの工程でいかに最適な解決策を見つけ出せるかが鍵になります。これを一企業の担当者が行おうとすると、膨大な時間と労力がかかる上に、効果をあらかじめ予測するのは至難の業です。また、せっかく一つの工程の作業効率を改善できたとしても、その上流・下流で新たな問題が生じてしまうこともめずらしくありません。そうした庫内の流れを最適化し、一つにつなげることがTechrumの使命です。
当日、特に人の目を引いていたソリューションをいくつかご紹介しましょう。
まず、届いた荷物をトーモク(東京都千代田区)、日本製紙ユニテック(静岡県富士市)、なんつね(大阪府藤井寺市)が共同出展した開梱機「ABOT(アボット)」が開梱します。コンベヤーに荷物を流すと、同機は自動で段ボールの上部をカットします。上部から数ミリ下にある製品と段ボールの空間をカットするので、中の荷物を傷つけるリスクは少ないです。搭載したカメラが荷物のサイズを自動で計測するので、サイズの事前登録は必要ありません。
次はタクテック(東京都文京区)が開発した仕分けシステム、「GAS(ゲート・アソート・システム)」です。バーコードを読み取ると対応したゲートが開くので、作業者はそこに商品を入れます。バーコードを一つ読み取るごとに、一つのゲートしか開かないので、作業ミスはほとんど生じません。
仕分けした荷物を運ぶ際には、SUS(静岡県静岡市)が開発した無電力コンベア「カラクリモジュール」が活躍します。こちらは空中を介して商品を搬送します。上昇時はテコと動滑車、下降時は重力と減速バネを活用し油圧・空圧・モーター不要で空中搬送を実現し、あらゆるシーンに対応できます。
開梱し、仕分けられ、運ばれた荷物を庫内搬送するのは協働運搬ロボット、「Thouzer (サウザー)」です。サウザーはあらかじめ地面に貼ったテープの上を走ります。テープは市販のもので構わないので、特殊な機器は必要なく、ルート変更も容易です。また、サウザーは荷物を載せた状態で、人はもちろん前方の台車やサウザーを追従できます。作業者が別の台車を押し、サウザーに追従させることで、従来の2倍の量を一度に運搬でき、省人化に貢献します。
100社を超えたテクラム参画企業。
野村不動産は2024年10月に開催された「スマート物流EXPO名古屋展」にも出展しました。こちらは開催4年目を迎える若い展示会です。展示会場を名古屋に移した野村不動産はどのような展示を行うのでしょうか。早速会場をのぞいてみましょう。
当日は国際物流総合展に引き続き、遠国氏が前回の展示会にはなかったTechrumのソリューションを紹介してくれました。
まずはニューラルグループ(東京都千代田区)の「デジパーク」。こちらは駐車場の空き状況をリアルタイムに把握できるソリューションです。エッジAIが駐車場に停車した車を自動で認識し、どこに、どの程度空きがあるかを判断します。大掛かりな工事などは必要なく、すでに設置している防犯カメラなどに後付けするだけで良いという手軽さが魅力です。物流施設においては、バースの待ち時間削減につながることが期待されています。
株式会社ビーキャップ(東京都港区)の「Beacapp Here (ビーキャップ・ヒアー)」は、人の位置情報を確認できるシステムです。一部のLandportでは現場にビーコンを導入し、人の動きを追っています。そうすることで庫内のロケーションに詳しい人を把握することができ、指示系統を整理することができます。また、近年物流施設ではスポットワーカーが多用されています。スポットワーカーは急な需要増などに対応できて便利な一方、人の出入りが頻繁になり、セキュリティが甘くなるのも事実です。位置情報を把握できるシステムは犯罪の抑止になるとともに、荷主への安心材料としても機能するわけです。
遠国氏は「10月時点でTechrum参画企業は100社を超えました」とうれしそうに話してくれました。さらに「100社といわず、200社、300社を目指したいです」と気合十分な様子です。
会場には両会場のTechrum展示スペースをデザインした朝倉氏の姿もありました。当日、朝倉氏が紹介してくれたのはロジテムエージェンシー(東京都港区)の「Smart-Carry(スマートキャリー)」です。これは台車にセグウェイ社の電動二輪車のような自立モーターを取り付けた製品で、ピッキング作業者の歩行距離を大幅に減らすことができます。「一般的にピッキング作業者は庫内を1日12キロ歩くといわれているところ、これを使えば歩行距離を500メートルにまで減らせます」(朝倉氏)。接続する台車は既存のものを使えば良いので、大掛かりな設備投資などは必要ありません。朝倉氏によると、スマートキャリーには耐荷重300キロまでの台車を接続可能とのこと。それほどの重さのものを人が押すのは大変な重労働です。Techrumのソリューションは物流の効率化のみならず、現場作業員の負担軽減にも寄与します。
関西の一大拠点Landport東海大府。
続いては2025年10月にオープン予定の「Landport東海大府」をご紹介しましょう。記者の質問に答えてくれたのは野村不動産の峰岸氏です。
峰岸健太郎氏(野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業一課 課長代理)
Landport東海大府の魅力はなんといっても立地の良さにあります。市街地配送はもちろん、大阪-東京の中間地点に位置するため中継拠点としても十分に機能します。
峰岸氏の言葉通り、Landport東海大府の立地は絶妙です。渋滞にはまらなければ、東京から3時間半で到達できる位置にあるため、この区間をドライバーは休憩なしに走り抜けることができます。現在、トラックドライバーには4時間ごとに30分の休憩が義務付けられています。しかし、なかば義務的に休憩をとるトラックでSA(サービスエリア)は混雑し、SA全体の見通しが悪化。事故のリスクが高まっていることが問題視されています。また、配送効率を考えても、東京から4時間以内に走破できるルートを確保することは重要です。
「関西の物流拠点としては小牧の名前が挙がることが多いですよね。しかし、実は東海大府と小牧とでは大阪までの距離は大して変わらないんです」と峰岸氏。その言葉からは東海大府という土地が秘めるポテンシャルの高さが感じられました。
施設にも目を向けてみましょう。Landport東海大府は「野村不動産の物流施設史上最大規模」(峰岸氏)の名に恥じぬ堅牢さを誇ります。施設には耐震構造の実質的な上位互換である免震構造を採用。峰岸氏によると「免震構造はコストがかかるため、一定以上の規模の施設でないとコストメリットがありません」とのこと。免震構造は大きいスケールの物流施設だからこそ許される、贅沢な仕様といえそうです。
建設中のLandport東海大府の様子をさらに詳しく知りたい方は、既存の記事で存分に紹介しているので、そちらをご覧ください。
現場で垣間見得た、野村不動産と建設会社とのパートナーシップ
参画企業100社を超えたテクラム、そして弊社最大規模の物流施設Landport東海大府。スマート物流EXPO名古屋展では、さらなるスケールアップを目指す野村不動産の姿勢が明示されました。
人と企業をつなぐ大きな輪に
東京国際物流展では野村不動産のつなぐ力が、スマート物流EXPO名古屋展ではそのスケール感が明らかになったと思います。弊社はこれからも人と企業をつなぐ大きな輪を形づくっていきます。野村不動産のこれからに、どうぞご期待ください。
国際物流総合展2024 野村不動産ブース紹介
スマート物流EXPO名古屋 野村不動産ブース紹介