Landport横浜杉田、
未来を見据えた物流課題への挑戦【前編】
人口減社会という戦後日本が経験したことのない環境下で、ECをはじめとする物流需要が増大するなか、物流施設のあり方も変化が模索されています。物流不動産デベロッパーとしては老舗に属しながらも新たな可能性に挑戦し続ける野村不動産は、横浜市金沢区で同社が開発を進めている
「Landport横浜杉田」で、テナントを強力にバックアップする画期的な仕組みを導入する見込みです。
この革新的な試みの中心には、先進的な自動倉庫システムの導入があります。前編(本記事)ではLandport横浜杉田の建物スペックや立地について、後編ではシェアリングサービスとして導入される自動倉庫を中心とした機能面について、LOGISTICS TODAY編集長の赤澤裕介氏に、野村不動産で
「Landport横浜杉田」プロジェクトに携わる浅見梨紗氏と川本渚氏を取材してもらいました。
<左>野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業二課 川本渚氏
に聞く
(インタビュアー: 赤澤裕介LOGISTICS TODAY 編集長)
Landport横浜杉田は「みんなのコストを減らせる倉庫」
赤澤裕介氏(LOGISTICS TODAY編集長)
今日は、野村不動産が開発中の物流施設「Landport横浜杉田」について、プロジェクトに携わる浅見さんと川本さんのお二人にお話を伺います。
浅見梨紗氏(野村不動産 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業二課 課長代理)
私は野村不動産に入社して10年目です。入社以来、主に住宅の販売に携わってきましたが、住宅や商業ビルの事業推進やリーシングビジネスを経験したのち、現在は物流部門に異動してBtoBの仕事に挑戦しています。
川本渚氏(野村不動産 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業二課)
私は入社して4年目で、物流部門には半年前に異動してきました。物流という新しい分野での挑戦にワクワクしていますし、自分自身のスキルアップにもつながっています。Landport横浜杉田が初めての担当プロジェクトになります。
赤澤氏
物流業界は人手不足が加速しているという意味で代表的な産業ともいえます。こうした状況を踏まえると、女性が進出しやすい雰囲気づくりが重要ですね。
浅見氏
入社当初、物流事業部門の規模は今の4分の1程度で、女性の数が少なかったのを覚えているのですが、それから10年近くたって異動してみると、思いのほか女性が多く活躍していることに驚きました。女性の視点が求められる場面も増えており、やりがいを感じています。
川本氏
営業先で「女性なんですね」と驚かれることもありますが、物流現場では女性の比率が増えてきていると感じることも増えました。最近の物流施設ではカフェテリアなどのアメニティも充実してきており、休憩スペースなども整備されています。
赤澤氏
変革期に入ったともいえる物流業界でこの物件を担当することの意味のようなものをどのように感じていますか。
浅見氏
物流事業部門に異動してから、業界の重要性や課題について深く考えるようになりました。特に「Landport横浜杉田」プロジェクトを通じて、物流施設が地域社会や経済に与える影響の大きさを実感しています。テナントの皆様と一緒に最適なソリューションを考え、提供することで、物流業界の変革に貢献できることに大きなやりがいを感じています。
川本氏
私も同じく、このプロジェクトに携わることで、物流業界の変革に直接関わる素晴らしさを実感しています。最初は不安もありましたが、今ではチーム全体で協力しながら問題を解決し、新しい価値を提供できることに誇りを感じています。今後もこの経験を活かし、より良い物流施設を提供していきたいと思います。
赤澤氏
お二人にそのようなやりがいを感じさせる「Landport横浜杉田」は、どのような物流施設なのか、ひとことで特徴を説明するとどうなりますか。
浅見氏
この施設の最大の特徴は「みんなのコストを減らせる倉庫」です。広場や屋上の菜園など、地域のコミュニティとの連携を重視し、自動倉庫を導入して効率化を図り、駐車場も十分に備えています。これらがテナントのコスト削減に寄与すると考えています。
川本氏
効率化と生産性の向上がキーワードです。人の面でも運用面でも、効率化を進めることで手間や費用を減らしていくことができます。自動化技術を導入することで、物流の効率を大幅に高めることが可能です。
地域と共生するイベントとコミュニティ活動
それでは、Landport横浜杉田の特徴を詳しく見ていきましょう。
この物流施設では、物流業務の効率化と安全性の確保に加え、地域社会との共生を重要視しています。施設計画では、多彩な付帯設備を備え、利用者と地域社会の双方にとって魅力的なスペースを提供することを目指しており、地域住民とのつながりを強化し、地域社会の一員としての役割を果たすために、様々な取り組みを計画しています。
浅見氏
新杉田駅から徒歩16分という立地は、通勤の利便性を高めています。地域密着型の採用活動を行い、地元の求人媒体を利用したり、地域のイベントでの求人ブース設置などを通じて、地域住民にアプローチする予定です。
出典:背景地図/地理院地図Vector
※距離表示については、地図上の距離計測に基づいた概則距離となります。
赤澤氏
具体的にはどのような工夫が施されているのかでしょうか。
川本氏
まず、施設の外構には広場やベンチが設置され、地域住民に開放されたスペースを提供する予定です。また、地元の歴史的樹木である杉田梅の植林など、自然や文化を取り入れた空間作りに力を入れます。これにより、施設を訪れる人々にとって、より親しみやすく快適な環境を提供することを目指しています。
さらに、施設の屋上には屋上菜園が設置され、テナント従業員が憩い交流できる場を提供する予定です。普段倉庫で働くテナント従業員にとって、空の開けた開放的な場所で癒され、エンゲージメントの維持や向上につながることを目指しています。
施設内にはコンビニやカフェテリア、休憩スペースを設け、従業員がリフレッシュできる環境を整えています。また、屋上の菜園はテナントの方々が利用できるもので、リラックスしたひと時を提供します。また、地域の方々との連携の取り組みも計画しています。例えば、広場では地域住民向けのイベントを定期的に開催し、地域とのつながりを深めていく予定です。こうした取り組みを通じて、地域社会に根ざした物流施設を目指しています。
このような取り組みにより、Landport横浜杉田は地域社会との共生を実現し、地域住民からの支持を得ることを目指しています。さらに、地域防災向けのサービスメニューも充実しており、防災訓練や災害時の避難所(津波避難施設)としての機能も備える計画です。これにより、地域全体のレジリエンス向上に貢献し、安心して働ける環境を提供することを目指しています。
物流業務の効率化と安全性の確保に加えて、利用者と地域住民が快適に過ごせる環境づくりにも力を入れます。この施設は、多彩な付帯設備を備え、利用者と地域社会の双方にとって魅力的なスペースを提供することを目指しています。
施設内には無人販売スペースが設けられ、利用者が必要な物を手軽に購入できるようになります。これは特に、施設内で働く人々にとって利便性を高める要素となります。加えて、広場では地域イベントやマーケットが開催される予定で、地域住民との交流を促進する場として機能します。この取り組みがテナント従業員の雇用機会の呼び水になることへの期待もあり、建物竣工後のテナント間や地域間の交流拡大が待望されます。
このように、Landport横浜杉田は物流拠点としての機能だけでなく、地域社会との共生を重視した設計が施されています。多様な付帯設備を備えることで、地域全体の生活の質を向上させ、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
効率と利便性を兼ね備えた立地条件
物流施設における立地は、効率的な運用とコスト削減に直結する重要な要素です。野村不動産が開発するこの施設は、その優れた立地条件により、多くの物流企業にとって魅力的な選択肢となっています。
首都高湾岸線の杉田ICからわずか680メートルという近さは、大消費地である東京都心部や神奈川県内へのアクセスを容易にし、配送時間の短縮とコスト削減に大きく貢献します。また、横浜港や川崎港へのアクセスも良好で、輸出入業務を効率的に行うことが可能です。
さらに、この施設が位置する新杉田駅を中心とした半径3km圏内には約11.8万人の労働者人口があり、有効求人倍率は0.54倍と、労働力確保が容易な環境が整っています。特に、この地域は周辺エリアと比較して多くの労働者が存在し、労働力の確保が非常にしやすい状況です。また、周辺の住宅地が多いことも、近隣からの労働力を確保する上で大きな利点となっています。
配送圏内についても、この施設は非常に優れています。配送30分圏内には横浜市内や川崎市内が含まれ、配送60分圏内には東京都心部や埼玉県南部、千葉県西部など、広範囲にわたる都市が含まれます。これにより、迅速な配送が可能となり、顧客満足度の向上にも寄与します。
出典:背景地図/株式会社ゼンリンデータコム AreaCutter
※距離表示については、地図上の距離計測に基づいた概則距離となります。
周辺にはヤマト運輸や佐川急便、日本郵便などの主要な宅配・路線業者の拠点が点在しており、物流ネットワークとの連携が容易で、迅速かつ効率的な配送サービスを提供することができます。これにより、施設利用者は多様な配送オプションを選択できるというメリットがあります。
また、Landport横浜杉田は、地域住民との共生を重視した運営も行っていきます。地域向けのイベントやサービスを積極的に提供することで、地域社会との連携を強化し、物流施設に対する理解と支持を得ることを目指しています。このような取り組みは、施設の安定運営にとって重要な要素であり、地域の一員としての役割を果たすことにも繋がります。
続いて、具体的な施設の特徴や技術的な設備について詳しく見ていきます。
両面バースの導入による効率的な入出庫
Landport横浜杉田は、物流業務の効率化を追求した最新の設計を誇ります。その中でも特筆すべきは、1階に導入された両面バースです。この設計により、物流施設内での入出庫作業が格段に効率化され、スムーズな荷物の取り扱いが可能となります。
この施設の1階には、約25,821平方メートル(約7,811坪)の倉庫スペースと約7,500平方メートル(約2,269坪)のバーススペースが設けられています。また、事務所スペースも約815平方メートル(約247坪)確保されています。バースにはトラック106台が同時に利用できるスペースがあり、垂直搬送機が西側と東側に各1台配置されています。
両面バースの最大の特徴は、トラックの両側から同時に荷役作業が行える点です。これにより、複数のトラックが同時に荷下ろしや積み込みを行えるため、待機時間の短縮と作業効率の向上が実現します。特に、繁忙期における大量の荷物の取り扱い時には、この効率化が大きな差を生み出します。
さらに、両面バースの設計は、施設内の車両動線を最適化するための工夫が随所に施されています。ランプウェイを含めた敷地内一方通行や歩車分離の導入により、トラックの安全かつスムーズな移動が確保されています。これにより、トラックの渋滞や混雑が避けられ、事故のリスクも低減されます。
また、両面バースの設置は、多頻度配送を求められる業種にとって非常に有利です。例えば、宅配業者やスーパーマーケットの物流拠点として利用する場合、頻繁な入出庫作業が効率的に行えるため、配送サービスの品質向上に寄与します。特に、宅配会社等の路線便ターミナルや店舗配送等において、多頻度配送が実現可能です。
このように、両面バースの導入により、Landport横浜杉田は効率的で安全な物流拠点としての機能を強化しています。次のパートでは、最先端の免震構造と安全対策について詳しく見ていきます。
最先端の免震構造と安全対策
Landport横浜杉田は、物流業務の効率化だけでなく、安全性の確保にも力を入れた施設です。特に、最先端の免震構造と充実した安全対策が施されており、地震やその他の災害時にも安定した運営が可能です。
この施設は地震の揺れを最小限に抑える免震構造を採用しています。これにより、地震による施設内の設備や保管品への影響を最小限に抑え、安全な作業環境を提供します。また、停電発生時にも対応できるよう、72時間運転可能な非常用発電機を完備しており、災害時にも物流業務の継続を支援します。
施設の電力供給面でも十分な対策が取られています。約4,000kVAまで受電可能な特別高圧受電による引き込みが計画されており、機械化や空調設備の導入に対応できる電力容量を確保しています。これにより、さまざまな物流機器や設備の運用が可能となり、効率的な物流業務を支える基盤となっています。
省エネ対策として、人感照明が導入されており、使用されていないエリアの照明を自動的にオフにすることで、エネルギー消費を抑えることができます。こうした省エネ技術は、持続可能な運営を実現するための重要な要素となっています。
また、施設の4階には作業用空調が設置されており、夏は30℃、冬は20℃に設定されています。このような快適な作業環境を提供することで、労働者のパフォーマンスを向上させることができます。さらに、北側区画にはカフェテリアと無人コンビニを設置しており、労働者が快適に休憩できるスペースを提供しています(その他、1階東側と2階西側にもカフェテリアを設置)。
Landport横浜杉田は、これらの最先端の安全対策と快適な作業環境を整えることで、効率的かつ安全な物流拠点としての役割を果たしています。
後編では、Landport横浜杉田の最大の特徴ともいえる、最新の自動化技術や効率化の取り組みについて詳しく紹介します。また、テナント企業へのサポート体制についても掘り下げ、物流施設としての総合力と、持続可能な運営に向けた取り組みを明らかにします。