変わるトラック輸送、
求められる「中継輸送」【後編】
働き方改革に伴って、トラックドライバーの運行業務のあり方を大きく変える中継輸送が注目されています。これまで1人で担っていた1つの運行案件を、複数のドライバーで分担することで、長時間労働、遠距離運行を削減し、日帰り運行などドライバーのQOLに貢献できる取り組みとして、政府も物流各社への導入を推奨しています。物流関連2法の改正で「効率化」取り組みが義務化されたことから、荷主が主導して中継輸送を推進していくことも期待されています。
しかし、実現までの調整や、運行管理が難しくなること、新たなコスト発生など、実際の運用までには課題が多いことも事実です。国土交通省の発表資料では、2021年の調査で、トラック事業者の57%が中継輸送に前向きとしながら、実際に運用しているのは16%という状況でした。運送事業者の大部分を占める中小事業者にとっては、導入のハードルがまだまだ高いと思われます。
中継輸送の課題に、中小事業者はどう取り組むべきか
中継輸送を実現するためには、どこで中継するのか、中継地点の設置が必要です。前編で解説した中継輸送の方式によっては、中継場所だけではなくスタッフや機材(フォークリフトなど)の配置も必要となります。大手事業者ならば投資も可能かもしれませんが、中小自業者が独自に設置することは難しく、国などが主導した拠点整備も必要です。
「どこで」以上に、「誰と」中継するかも中小事業者にとっては難しい問題です。大手荷主主導によるコーディネートや、全国に拠点を広げる幹線運送社ならば、それぞれのネットワーク内での中継完結も可能でしょうが、全国的な連携のない事業者にとっては、パートナー探し自体が最大の障壁となります。また、荷物を中継することで、高速利用料金や中継拠点の利用料、新規保険料のコスト増、リードタイムも増えることが想定されるだけに、荷主の理解、事前の協議も欠かせません。また、ドライバーの実労働時間が減ることで収入も減少するばかりでは、運転手不足に拍車をかけることにもなりかねません。適正な料金収受に取り組むなど、経営体質の改善を並行して行うことも重要です。
また、異なる事業者同士の連携では、荷物破損などのトラブル対応などの協議なども必要となるはずです。トラブルにおける責任の所在など、あらかじめ明確に規定しておくことにも時間が必要です。
国交省では、まずこうしたパートナー探しでつまずく事業者に対して、「ホワイト物流」宣言事業者同士の連携や、事業協同組合の活用などを提案しています。日本貨物運送協同組合連合会は、インターネットによる求荷求車マッチングシステムの運用のほか、中継輸送の実証実験も実施しており、組合員間の連携の調整役となることも想定されます。
中継地点、協働の舞台となる施設開発も、今後の重要テーマ
中継輸送プラットフォーム事業と呼べるような取り組みが増えていくことも期待されます。中継輸送は、スポット輸送よりも定型輸送での運用に適しているため、幹線輸送で構築した基盤を活用した協働作業や事業化の取り組みも可能になってきます。NEXCO中日本と遠州トラックは、東京・大阪のほぼ中間地点に中継物流拠点「コネクトエリア浜松」を運用し、中継拠点の提供を行っています。NEXT Logistics Japan(NLJ)と鴻池運輸は共同で、関東と関西間の輸送を中継輸送で、しかもダブル連結トラックでの運用に取り組んでいます。中継拠点にはNLJ取引先事業者の静岡県下の拠点を使用するとしており、パートナー会社との協力で物流効率化に取り組むNLJを中心とした事業者間の取り組みにも、今後拡大されてくるのではないでしょうか。
また、物流拠点のシェアリングプラットフォームを展開するsoucoは、最適な中継拠点を算出するソリューションを展開しています。発着地と荷物量から、輸送費や保管費などでも最適な中継地点を提示、既存の倉庫を中間保管拠点として、独自に新たな拠点を確保する必要がありません。
国交省では、1日のドライバーの拘束時間の上限から、片道250km程度の距離を片道運行の上限としています。500kmを超える長距離幹線輸送では、ドライバーが日帰り運送可能な距離を基に、新たな中継拠点・中間拠点としての活用を考慮した物流施設開発も各地で増加しています。24年問題、さらにこの後も続くであろう物流危機の対応においては、こうした中継拠点・中間拠点としての物流施設を適切な場所に開発することも、社会貢献の意義ある取り組みとして注目されるのではないでしょうか。