物流現場の改革後押し、自動化ソリューションも多様化時代へ【前編】
EC市場の活況で、倉庫内業務にはより複雑な作業対応と、スピードが求められる状況となっています。入出庫管理や、ピッキング、仕分けなどの現場作業はますます煩雑になり、人的ミスの発生リスクも高まりますが、それに反して労働人口は右肩下がりです。物流現場の対応として「自動化ソリューション」の導入も急務となっています。
自動化ソリューションの導入は、属人化した物流現場から、女性、高齢者、外国人労働者やスポットワーカーなど多様な人材が、誰でも同じように作業できる現場への変化を後押しします。自動倉庫という大掛かりな省人化改革には手が届かない物流現場でも、作業工程の中でもっともボトルネックとなっている部分を洗い出し、その工程の効率化からオペレーションを再編するという現場改善の現実的な選択肢となっています。
これまでのExcel管理で、特に支障がないとする現場でも、今後は担当者の不在や交代が事業継続の致命傷となる懸念もあり、紙ベースの管理からの脱却と、自動化ソリューション運用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、もはや避けては通れないのではないでしょうか。
物流の各工程ごとに、活発化する多様な自動化ソリューション提案
物流現場でのDX、自動化、省人化のソリューションでは、各工程ごとに特化したさまざまなツールが機能を競い合っています。
まず、入出荷・検品作業においては、在庫管理システム、倉庫管理システムなど、ペーパーレスでの管理業務に移行しておくことが、自動化ツールやマテハンのスムーズな導入の前提となるでしょう。ハンディーターミナルやモバイル端末を活用した商品管理、在庫管理などは多くの事業者も取り入れているはずですが、今後さらに管理商品の小口化や多様化が進み、食品の賞味期限の管理のように、より複雑な管理業務を瞬時に行うことも増えていくはずです。物流の変化に備えた拡張機能や、より生産性の高い検品システムの導入などは、素早くミスのない庫内業務の基盤となる部分です。
WMS(庫内管理システム)などでは、各ベンダーからさまざまな特長のソリューションが提供されており、拡張性や価格、得意とする業種などでそれぞれのセールスポイントを競い合っています。クラウド型でのWMSツール提供の他、物流業務コンサルティングの立場から包括的なDXとしての専用システム構築などアプローチもさまざまで、自社に適したソリューション選択は事業計画の最重要ポイントに位置付けられそうです。
搬送領域は、AGVやAMR、無人フォークリフトも増加、外国勢も参入
庫内の搬送などでも自動化は進んでいます。倉庫内作業者の負荷軽減のためには、搬送やピッキングなどで作業者が歩き回らなければならないような現場の見直しも重要です。
庫内の搬送を、人に代わってマテハンやAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)が担う方法もバリエーションが増えており、コンベヤーと自動ソーターとの連携や、ピッキングスペースにAGVが品物を届けるGTP(Goods to Person)システムなど、自動化・省人化により作業者は持ち場を離れることなく作業できる環境整備が進んでいます。AGVやAMRとの連携で、自動倉庫並の広い作業領域をカバーすることも可能となってきました。
搬送領域では、AGF(自動運転フォークリフト)市場もにぎやかです。フォークリフトの登録教習機関あたりの技能講習修了者数は、2008年から2019年で33%減少しており、トラック運転手だけではなくフォークリフトオペレーターも減少していくだけに、AGFの活躍機会も増えていくと思われます。フォークリフトオペレーターの不足は、未熟な技術や過密労働で庫内事故を誘発する危険性を高めるだけに、AGF導入は安全のための取り組みとも言えます。
また、自動機器の夜間稼働によって、人の不在時の出荷物準備作業など、荷役・荷待ち時間の削減にも効果的です。EC市場が極めて大きい中国は、AGVやAMRはもちろん、AGFの導入も進む自動化機器の先進国だけに、多数の中国製ツールが日本に参入しています。大きな国内市場を背景にグローバル市場も視野に入れており、豊富なバリエーション、価格もセールスポイントとなっています。
国内AGFは機能の強化で勝負しています。例えば、仮置き場からパレットの棚入れ自動化や、トラックからの自動荷下ろし後にAGVと連携して仮置き場へ搬送するなどの機能実装も進んでいます。トラックへの自動荷積みでは、すでに有人フォークリフトと変わらないスピードと正確性で作業可能なことを実証した事例も報告されており、他機器との連携や自動制御、センシング技術の発達などで、より高度な次のステップの変革をもたらしそうです。
人に変わってロボットが搬送する技術は、こうした多様な機能の競い合いも、さらに進歩を加速させています。それぞれの性能、機能によって得意とする環境や作業内容もさまざまなだけに、ソリューションの比較検討においても、自社の庫内課題をどれだけ把握しているか、どれだけ問題点を認識しているかが重要になると考えられます。