Landportへのお問い合わせ

施設一覧

求人募集

変わるトラック輸送、
求められる「中継輸送」【前編】

物流業界全般

物流業界では、トラックドライバーの時間外労働の上限規制への対応が引き続き大きな課題となっています。ドライバーの運転時間や移動距離の短縮により、今までのような運行体制では物流を維持できず、物流関連2法の改正では運送力の低下に対応する「効率化」への取り組みが、業界全体に課された義務となりました。

特に長距離輸送においては、1人のドライバーですべての運送を完結してしまうこれまでの運び方が成立しなくなっています。そこで、1人のドライバーで運行を担うのではなく、複数のドライバーが業務を分担して1つの運行を完了させる「中継輸送」の検証や導入の報告も多くなりました。

トラックドライバーの低い賃金水準と過酷な労働環境の改善を目的とした働き方改革法案は、制限された運転時間の中で「どこまで運べるか」を大きな課題として、中継輸送による運び方の変革も早くから検証されてきました。国土交通省も2017年には「中継輸送の実施に当たって(実施の手引き)」を公開するなど、積極的な導入検討を呼びかけてきましたが、2024年を迎えたことで、その機運が高まっていると言えます。

中継輸送の3つの方法、それぞれの長所・短所を把握して運用検討

「2024年問題」が話題に上ることが多くなっていますが、日本には元々少子高齢化という大きな課題がありましたね。これにどう対応するかは企業にとっても重要なテーマでした。この問題に対して、物流業界としても多くの対策が求められていますが、どのように考えていますか?

中継輸送には主に3種類の運用方法があります。「トレーラー・トラクター方式」「荷物積み替え方式」「ドライバー交代方式」と、いずれも複数のドライバーで1つの運行を解決する取り組みですが、運行の引き継ぎ方などに違いがあり、それぞれメリットやデメリットがあります。

「トレーラー・トラクター方式」は、中継地点でトレーラーヘッドだけを交換します。荷物を積んだトレーラーだけをそのまま交換する運用なので、中継にかかる時間も短時間で済みますが、トレーラー運用の場合にはそれぞれのドライバーに「けん引免許」が必要となり、トラクター交換作業のためのスペースも必要です。

「荷物積み替え方式」は、中継地点で貨物を積み替える方式で、流通型物流施設で運用されているクロスドックを中継拠点で行うと考えて良いでしょう。通常、ドライバー自身に作業負荷がかかるわけではなく、運転手にとっては通常の運行と変わらない利点がありますが、当然積み替えの時間が必要となります。中継地点には積み替え荷役のための機器やスタッフの準備や、積み替え時の破損リスクなども発生してしまいます。

「ドライバー交代方式」は、トラック車両ごと交換する方式で、ドライバーは中継拠点で別のトラックに乗り換える運行です。交換作業のスペース、積み替え時間も必要なく、スムーズな運行が可能ですが、運転車両の交換によるドライバーの負担が課題となります。多くのドライバーは自分の車両を個人的なスペースと考えているため、車両交換ではストレスが増大する恐れがあります。

いずれの方式にもメリットとデメリットは存在しますが、ドライバーの働き方改革という観点では、有効な取り組みであることは間違いありません。中継地点での折り返し運行では、長距離輸送における長時間労働を解消し、日帰り勤務などを実現することでQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を重視した近年の労働者の意向にもマッチした働き方へと革新できます。

中継輸送のメリットとデメリット、事業者によっては高い導入のハードル

事業者側のメリットはどうでしょう。まず、法令遵守による適切な労働環境改善で、不足するドライバーの確保に役立つことは、運送会社にとっての大きなメリットです。ドライバーの健康を守ることも、安定した雇用において大切な要素です。より良い職場作りで、長く、安心して、さらに異業種からの流入や、女性など多様な人が活躍できる環境にすることが期待できます。

また、これまで地場を中心とした配送機能しか持たなかった事業者には、連携会社との協力関係構築で、幹線輸送など新たな事業領域に参入できることもメリットになるでしょう。事業領域を広げることは持続的経営での大きな武器となるはずです。

デメリットもあります。運用開始までの調整、計画の難しさや、運行管理が複雑になることなどは実現に向けての大きな障壁となるはずです。また、運用のためにはどうしても初期投資が必要となり、対費用効果は慎重に検討する必要もあるでしょう。中継する際の引き継ぎ、待ち合わせがうまくいかなければ、ドライバーの拘束時間削減につながらず、リードタイムも伸びてしまうなど、効率化の意義も無くなってしまいます。より精度の高い運行管理の整備など、管理面の負荷が増えることも考えられます。

とは言え、物流危機における有効な解決策として、ぜひ広がってもらいたい取り組みです。後編では、こうした中継拠点の課題についても検証しつつ、運用事例などから、これから取り組みを始める時の参考材料などにつながると良いと考えています。

一覧へ戻る