物流施設の効率化・省人化ソリューションの決定打、自動倉庫【第1章】 なぜ今「自動倉庫」が注目されるのか、物流の現状から整理する
急速に進化する物流業界の中で、一際注目を集めているのが「自動倉庫」です。2022年の市場規模が1391億円を超え、物流工程の機械化と自動化が進む中で、その重要性はますます高まっています。自動化技術の進歩や庫内作業の効率化が、この自動倉庫の普及を後押ししています。
では、なぜ今、自動倉庫がこれほどまでに注目されているのでしょうか。その背景には、急成長を遂げるEC市場の影響や、労働人口の減少といった物流業界が直面する現実があります。まずは、現在の物流の現状について詳しく見ていきましょう。
EC市場の拡大で、物流施設に求められる機能強化
物流事業は、EC(電子商取引)の拡大による業務変革に直面しています。人口の減少に伴い、消費人口も減少して行きますが、ECの市場規模は右肩上がりで伸び続け、2022年の物販系分野のBtoCのEC市場規模は13兆9997億円と、前年比5.37%の上昇を記録しました。すべての商取引金額におけるEC市場規模で見ると、物販系分野のBtoCでのEC化率は9.13%で伸長を続けています。
ECの需要拡大で多品種、多頻度小口化のオペレーション、在庫保管、BtoCの個別配送、適正在庫の保管、返品対応など、その対応も複雑化するばかりです。今後、現状ではまだEC化率の低い食品系などの伸長や、スマホの利便性向上もEC利用を後押しする要素となりそうで、物流拠点においてはそれに対応する機能強化が求められています。
「増えるEC、減る労働人口」のミスマッチを補填する自動化機器
こうした物流市場の需要増加に反して、それに対応できる人手不足は進行しています。
労働政策研究・研修機構が3月に発表した労働力需給の推計では、1人あたりゼロ成長、労働参加が現状のままというシナリオでの「労働力人口」は、2022年の6,902万人から、2030年に6,556万人、2040年には6,002万人に減少すると推計しています。
もっとも、経済・雇用政策によって成長分野の市場拡大が進み、女性や高齢者の労働市場の参加が進展する場合(成長実現、労働参加進展シナリオ)では、2040年は6,791万人への減少と、減少幅が縮小する試算もあります。その場合の女性の労働力人口は2022年の3,096万人から、2030年に3,174万人、2040年に3,178万人と微増で水準を維持し、60歳〜69歳の高齢者も2022年の954万人から2040年には1,353万人へと増加、70歳以上も2022年から2040年で233万人増加の765万人としており、女性と高齢者の労働参加が、労働を支える必須の要素となってくることがわかります。
また、外国人労働者においても、その労働人口は2022年の180万人から、2040年には414万人から453万人になると推計され、貴重な労働力として期待される状況です。
ただ、こうした成長実現、労働参加進展シナリオにおいても、産業別での就業者数増加が見込まれているのは「医療・福祉」や「情報通信業」「教育・学習支援」の分野などに限られており、「運輸業」では、2040年には2022年度比で31万人減の試算となります。同様に「卸売・小売業」、各種製造業をまとめた推計でも減少が見込まれ、倉庫で働く人材確保も年を追うごとに厳しくなっていくのは間違いありません。2030年、2040年に向けて、当然倉庫の領域でも、働く人が足りないことを前提にした準備が必要となります。
物流施設の省人化、究極の取り組みとしての自動倉庫
それでは、これからの倉庫運用はどのように取り組んでいくことが必要なのでしょうか。
まず、女性や高齢者、外国人就業者の活用が前提となることを忘れてはいけません。現在、ベテランの経験や知識に頼っているような「属人化」と呼ばれるような現場では、すでにそのノウハウの引き継ぎさえままならない状況を迎えているはずです。あるいは、引き継いでもすぐに離職してしまう状況もあるのではないでしょうか。こうした現場が10年後、20年後に向けて、多様な人材に業務を引き継ぐことができるのかというと、多分むずかしいのではと言わざるを得ません。業務を属人化するのではなく、平準化する環境を今から整えておかなくては、とても間に合わないはずです。
倉庫で働く人々にとって長く就労できる快適な職場とするために、また、女性や高齢者、外国人が働きやすい職場とするためには、業務の平準化、効率化は避けて通れません。2024年問題を契機として、倉庫現場の効率化を進めるソリューションも、各工程ごとに多数提案されている状況で、DX=デジタルトランスフォーメーションという言葉も、すっかり定着した感があります。
課題を先読みし、早くからDXに取り組むことで、一歩ずつ現場改革に取り組んできた企業も多いはずです。自動化機器、マテハン機器を必要に応じて導入しながら、効率化へのステップを踏んできた企業では、さらなる人材不足や就労者の属性の変化に対応するための次のステップとして「自動倉庫」領域での投資も有力な選択肢となっています。
将来の成長を見据えれば、もはや各工程の部分最適だけでは問題を解決できず、倉庫内工程をトータルに効率化し、全体最適化を目的とした自動倉庫の導入は、合理的な判断ともなってきました。「生産性の向上」「省人化」「人的ミスの排除」「保管スペースの有効活用」「サービス品質の向上」など、複雑化とスピードアップが求められる物流環境における自動倉庫運用のメリットは極めて大きく、限られた人材を安定して雇用することにも貢献するはずです。
自動倉庫の宿命とも言えるデメリット、それでも普及期が到来している
とはいえ、デメリットやリスクももちろんあります。導入後のシステム障害やトラブル対応は自動化機器が複雑化すればするほど難しくなるのはもちろん、なんといっても一番のデメリットは、導入コストということになります。
設備投資やシステム開発投資にかかる費用は、ある程度大きな事業規模の事業者でないと、特にEC領域の変化の激しい物流ニーズへの対応にも備えた早期の投資回収などは難しいはず。誰もが気軽に導入できる類のものでないことは確かです。「導入を検討できる」企業にとっても、事業成長の命運をかけた取り組みとして、中長期計画での緻密な検証なくしては実現しないでしょう。
それでも、自動倉庫が物流の効率化に与えるインパクトの大きさは無視できません。各地の物流展でも多様な自動倉庫が出展され、市場規模の拡大をみても普及期到来は間違いない状況です。
次稿では、自動倉庫市場の現状や、さらなる普及への課題などを検証してみたいと思います。