団体の枠を超えてサプライチェーン全域の対策示す「自主行動計画」
自主行動計画は物流改革の約束。
裏切り許されない24年問題対応(後編)
2023年末は、荷主事業者の各業界団体や、運送事業の関係団体から、「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」(ガイドライン)への具体的な取り組みについての自主行動計画の発表が相次ぎ、まさに「24年問題前夜」の様相となりました。
コラム前編では自主行動計画を、物流に係る荷主・物流事業者による物流改革の約束と捉え、その重要性について解説しましたが、後編では公表された自主行動計画で示された「約束」の事例を取り上げます。
SC全域での改革示した日食協の自主行動計画
物流における改革を積極的に先導してきた日本加工食品卸協会(日食協)は、23年11月20日に、物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画を公表しました。加工食品物流においては早くから、納品先での長時間待機やドライバーへの付帯作業の発生、小ロット・多品種・多頻度納品などの課題が顕在化していたことで積極的な対応も進み、行政や業界関係者を加えた物流検討会など、改革のモデルケースとなっている取り組みも多いだけに、その自主行動計画にも注目が集まります。
日食協では、物流の適正化・生産性向上は「1業種1企業だけの対応で成果を上げることは困難であり、発着荷主間の連携・協力があって達成されるもの」との前提で、製造・配送・販売の3業界で組織するフードサプライチェーン・サステナビリティプロジェクト(FSP会議※)で協議して策定された「加工食品業界製配販行動指針(FSP版)」を同協会の自主行動計画としています。ガイドラインが示した「発着荷主共通」「発荷主」「着荷主」「運送事業者」ごとの取り組み項目を、サプライチェーン(SC)全体での行程として可視化し、より実効力のある目標に落とし込んだ自主行動計画だと言えます。さらに、主要大手加工食品メーカーによる食品物流未来推進会議(SBM会議)とともに取りまとめた「荷待ち・荷役作業削減に向けた加工食品業界の取組みガイドライン」に基づいた、荷待ち・荷役作業削減の実現を図ります。
発荷主と着荷主共通で実施が必要なものとしては、「荷待ち時間・荷役作業等にかかる時間の把握」「荷待ち・荷役作業時間の2時間以内ルール」「物流管理統括者の選定」「物流の改善提案と協力」「運送契約の書面化」「荷役作業等にかかる対価」「運賃と料金の別建て契約」「燃料サーチャージの導入・燃料費等の上昇分の価格への反映」「下請取引の適正化」「異常気象時等の運行の中止・中断等」に取り組むとしています。
実施を推奨する事項では、「予約受付システムの導入」「パレット等の活用」「検品の効率化・検品水準の適正化」「物流システムや資機材(パレット等)の標準化」など効率化・合理化のためのガイドライン7項目や、「運送事業者との協議」「高速道路の利用」「運送契約の相手方の選定」など運送契約の適正化に関わる3項目、加えて「荷役作業時の安全対策」が挙げられました。
発荷主を対象として取り組みが必要とした事項としては「出荷に合わせた生産・荷造り等」「運送を考慮した出荷予定時刻の設定」の実現を目指します。また、実施推奨事項では、出荷情報等の事前提供(可能な限り出荷の前日以前に)、物流コストの可視化(メニュープライシングなど)、発送量の適正化など5項目に取り組みます。
着荷主側の取り組みでは、「納品リードタイムの確保」を取り組みが必要な事項とし、輸送手段の選択肢を増やす手段として納品リードタイムを十分に確保することを目標に設定。また、日内(朝納品の集中)・曜日・月波動など平準化や、適正量の在庫保有、発注の大ロット化等を通じて発送を適正化し、メニュープライシングの活用や、着荷主が車両を手配する巡回集荷など、より効率的な配送の検討を進めるとしています。
荷待ち・荷役時間の削減へ向けた取り組みもさらに具体化
SC全体での行動指針として策定されているため、「製造」から「配送」(メーカーから卸拠点)間、「配送」から「販売」の行程では専用DC(在庫拠点)から小売店舗間と、卸拠点から小売TC(通過型配送拠点)間の連携に分けて、それぞれの取り組み事項にも言及しています。
例えば取り組みが推奨される項目である「共同輸配送の推進等による積載率の向上」においては、製造メーカーと卸拠点間の連携において、メーカー・卸の車両の相互活用の検討や、共配荷主の配送条件調整(リードタイムや納品時間・曜日等)が挙げられ、専用DCと小売店舗間の連携ではエリア・方面別の共同店舗配送の検討が、卸拠点と小売TC間の連携では引き取り物流の推進や、他企業との共同TCセンター、店舗配送の検討が提示されました。また、業界特性に応じた取り組みとして、厳しい賞味期間管理の見直しなどにも取り組みます。
さらに、必須の重要取り組み事項とされる荷待ち・荷役の2時間以内ルール厳守では、付帯作業の定義(認識)を発着荷主・物流業社で合わせることを「ゼロステップ」とし、「第1ステップ」は発着荷主それぞれの拠点での荷待ち・荷役時間の現状を把握し、2時間以上となる場合は連携して時間短縮を図ること。「第2ステップ」では、さらに1時間以内を目指すという、取り組み過程ごとでの方針が掲げられています。SBM会議とともにまとめた「荷待ち・荷役作業削減に向けた加工食品業界の取組みガイドライン」では、荷下ろしにおける検品作業のための商品整列作業は発荷主事業者、荷下ろし商品整理のための什器の準備や、ラベル貼付、所定位置への2次移動、棚入れ、賞味期限入替は着荷主事業者の作業と、運送ドライバーの業務範囲を明確に規定したことと合わせて、荷待ち・荷役時間の削減で結果を示すべく具体的な変革を進めるとしています。
それぞれの改革を切り口に業界一丸の物流変革を
ここでは一例として日食協の自主行動計画を取り上げましたが、昨年12月26日時点で103の団体・事業者が自主行動計画を公表しており、各方面で問題点の洗い出しとその対策が進んでいます。深夜検品廃止への取り組みを掲げた日本百貨店協会や、荷役作業時の安全対策強化としてロール紙輸送における俵積み等の廃止・改善協議を開始するとした日本製紙連合会、ガイドラインに基づく取り組み以外にもSC全体での協業を進める物流構造改革検討会議体の設置や業界標準システムの開発、RFIDタグ導入・活用などを業界独自の取り組みとして掲げた大手家電流通協会など、各団体ごとの物流課題への取り組みが一気に加速していることがうかがえます。
計画から実行へと局面は変化し、業界一丸での一歩は間違いなく踏み出されました。4月1日がゴールではない、先の長い道のりとなるだけに、それぞれの領域から物流改革に積極的に関与し、果たすべき役割の成果を持ち寄って業界全体で対応することで、トラックドライバーをはじめとするすべての物流関係者にとってもより良い改革、「約束」が果たされてほしいものです。
※FSP会議所属団体:(小売業)日本スーパーマーケット協会、全国スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会(卸売業)日食協(製造業)SBM会議/味の素、カゴメ、キッコーマン食品、キューピー、日清オイリオグループ、日清製粉ウェルナ、ハウス食品、Mizkan