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2024年問題を左右する、物流企業・団体の「自主行動計画」とは 自主行動計画は物流改革の約束。
裏切り許されない24年問題対応(前編)

物流業界全般

物流業界にとって波乱の「2024年」がやって来た

呪文のように唱え続けられてきた「24年問題」というキーワード。ことし4月1日に施行される改正改善基準告示にともない、トラック運転手の労働時間に新たな制限が設けられることから、これまでのような「運び方」や物流構造のままでは、今年度中に14%、30年には34%まで輸送力が不足するという物流危機を表す言葉として、社会的な認知も広まってきています。24年が物流にとっての正念場であることを象徴的に表すとともに、これからも続く長い長い取り組みへ、あらためて気合いを入れ直すことを求める言葉でもあります。

「これまでのようには物が運べなくなる時代の到来」ーー社会インフラの中枢である運送・物流においては衝撃的な事態だが、これまでどこか他人任せの対応となっていた面もあったのではないでしょうか。物流業界の慣習によって形作られた「構造的な問題」として、強いリーダーシップによる変革なくしては解決しない課題であったことも対応を難しくしました。運送業が、トラックドライバーの長時間労働と低賃金、多重下請構造、荷主と運送事業者のアンバランスな力関係などを「前提」とすることで成立していた実態が浮き彫りとなり、個社単位ではなく業界全体での改革については、行政からの指針を持ったという側面もありそうです。

行政のリーダーシップによる物流改革促す規制的措置の導入

行政が改革のリーダーシップをとることで、物流危機の対応を明示したのが、昨年6月の「物流革新に向けた政策パッケージ」(政策パッケージ)と、「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」(ガイドライン)の発表でした。これまでも、「総合物流施策大綱」などで対応が促されてきた物流改革への指針ですが、政策パッケージでは規制的措置を含めた法制化が明示されたことで、強制力をともなって具体的な施策の実行が求められ、事態の緊急性も共有された。これまでの呼びかけのみの変革とは大きく異なり、国家レベルで、物流危機対策を加速させる契機となったと言えます。

政策パッケージでは業界の構造的な問題の改革に向けて「商慣行の見直し」が具体策に掲げられました。つまり、これまでの当たり前を見直すこと、例えばトラックの荷待ち・荷役時間がこのままで良いのか、納品期限の設定は適切なのか、多重下請構造を放置することで生じる問題はないのか、そもそも運送価格の設定は現状にマッチしているのかなどなど。これまでの商慣行が物流危機の要因となっていることを問題提起し、特に荷主の果たすべき役割が明示されたことで、改革の取り組みの方向性も明確になりました。

「商慣行の見直し」に加えて、「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」が政策パッケージの3本柱と位置付けられ、その対応のためのガイドラインを提示することで、どんな施策を実行しなくてはいけないかについてもガイドラインを指針として自己分析できるようになりました。効率化ツールの導入や標準化の取り組み、荷主においては役員クラスの物流管理統括者の選任なども言及され、各事業者にとってはガイドラインの各項目にどう向き合うかを公開することで、行政からの取り組み要請に対する回答を求められている状況です。

業界の未来自体を左右する「自主行動計画」の実行

政策パッケージとガイドラインの実行に向けて、23年度末までに民間事業者サイドで取り組みを求められたことの1つが、各業界・団体ごとの「自主行動計画」の策定でした。物流危機と言ってもその課題はさまざまであり、ガイドラインに示された取り組むべき事項、取り組みが推奨される事項を各々が検討し、企業や業種別の実情や課題に即した自主的な改革への行動計画を作成することが要請されています。

物流の維持は、各産業においても生命線であり、自主行動計画を基盤とした取り組みは避けられません。荷主企業にとっては「運んでもらえる業界」であることが、輸送能力の低下が予想される日本の産業全般の命題となるだけに、運送サイドでも公表された各自主行動計画を基盤に、協議、調整することで進展する項目については前向きに対応することも必要となります。自主行動計画の策定期限として設定された昨年末には各関係団体からの計画公表も相次ぎ、昨年12月26日の内閣官房の発表では、同日時点で103の団体・事業者が自主行動計画を公開しています。内閣官房ホームページで詳細を確認できるので、関連する団体や企業の公開情報は、ぜひ読んでみてください。

内閣官房ホームページ、自主行動計画
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/jisyukoudoukeikaku.html

読んでみると、業種ごとにさまざまな課題があり、自主行動計画ではその対応にも業界ごとの特殊な取り組みも見てとることができます。また、各団体の行動計画の中には、業態を超えて検証、実施する価値のある取り組みなども見られます。

自主行動計画は各団体・事業者から社会に向けた、「物流改革の約束」であり、ここに来てガイドラインに沿った取り組みを怠ることは、日本の経済界・物流界への背信と捉えられかねません。何よりもまず、約束を果たすことこそが、行動計画策定に係った全事業者にとっての命題となったと言えます。

1月の通常国会における物流政策の法制化においても、当然、各企業・団体が策定したこの行動計画が参考とされることになると思われます。「荷待ち時間・荷役作業等にかかる時間の把握」「荷待ち・荷役作業時間の2時間以内ルール」「物流の改善提案と協力」といった多くの自主行動計画に盛り込まれた取り組みについては、具体的なその達成状況の共有の仕方や、未達時の対応など、今後より詳細な指針が明らかになっていくでしょう。まずは自主制定した行動計画という約束を果たすため、地道な取り組みを進めていくことこそが、新しい法令下での規制的措置への対策にもなるはずです。

各業界が、24年以降も「運んでもらえる業界」としてどんな施策を解決し、実現しようとしているのか。次稿では自主行動計画の中から日本加工食品卸協会の自主行動計画をピックアップしてその詳細について紹介するので、改めてそれぞれの取り組み状況を見直す参考としていただければ幸いです。

※この記事は2024年2月に書かれたものです。

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