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求められる「業界一丸」の物流改革
〜物流施設が貢献できることとは〜

物流業界全般

改正改善基準告示施行を直線に控え、物流業界における「物流革新に向けた政策パッケージ」(政策パッケージ)への対応は待ったなしの局面となりました。政策パッケージでは、物流危機を招く要因となったトラックドライバーの厳しい労働環境が、どのようなことに起因して、どう対応すべきなのかが検証され、取り組むべきポイントが提示されています。また、荷主企業・運送会社に向けて物流危機対応として取り組むべき指針を「 物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」(ガイドライン)として公表し、業界全体で足並みを揃えて改革に踏みこみ、より広い領域で改善につなげる道筋を政府が先頭に立って指し示しました。

これまで、物流危機対応の必要性については理解しながらも、その実行については企業単位でのコスト削減を主眼とした効率化であったり、先進的企業によるモデルケースとしての領域にとどまるものなど、物流業界全体での改革を促す大きな流れにまではなってきませんでした。本来実現するべき物流危機対応・物流改革は、荷主と運送事業、さらには消費者まで含めた一丸での取り組みによって実現するものであり、強力なリーダーシップで方向性を指し示し、歩調を合わせての対応が必要となっていたためです。政策パッケージ、ガイドラインの発表を機に、個々ではなく協働をテーマにした取り組みも数多く報告されるなど、「業界一丸」で取り組むことの大切さが共有されたことは、改革へ向けて一歩前進と言えるのではないでしょうか。

政策パッケージに掲げられた取り組むべき事項には、規制的措置の導入についても言及されており、法令への対応も含めた取り組みが求められます。特に改革の主体となるべき荷主企業にとっては、運送事業者と力を合わせて「荷待ち・荷役の2時間ルール」の遂行や、物流改善や適正料金の見直しなどを進める商慣行の見直し、物流の効率化のためのDX推進、さらには物流担当役員の設置などを通じて、荷主としての物流戦略の意識変容を進める取り組みを実現していくことが求められます。

また運送事業者には、トラック運転手の労働環境の改善に向けて、より積極的な行動が求められます。ドライバーの労働状況を可視化して法令を順守するとともに、荷主への監視強化のために組織された国土交通省のトラックGメンの制度や、新たな指針が示された「標準的な運賃」を活用し、適正な運賃を通じてトラック運転手の賃金水準を上げるような協議を続け、改善につなげることが重要となります。

さらに、物流業界一丸としての取り組みという観点では、荷主や物流業者以外のさらに広い領域からの後押しも必要となります。例えば、効率化を推進するソリューションやシステムの開発では、今後もさらに機能強化が進められることで、物流改善も前進していくはずです。

さてここで、業界一丸の対応の中での物流施設に注目してみましょう。DX化や自動化の取り組みにおいての最前線の現場でもあるだけに、その取り組み次第で大きな貢献を期待できるのが大型物流施設です。物流拠点としての機能性によって、今後の物流危機対応を大きく左右する重要な役割を担う存在です。物流改革の側面から近年の倉庫の動向についてまとめてみましょう。

物流施設による改革。物流危機への機能強化が物流改善を支える

EC(電子商取引)の拡大・多様化や、老朽化倉庫からの借り換え、半導体工場進出による活況、そしてポスト24年のサプライチェーン(SC)構築を見据えた拠点の見直しなどの堅調な倉庫需要に応えて、23年は大型物流施設の供給が続き、今後も注目物件の竣工が全国で次々と予定されています。これまで大型物流施設の開発は、「汎用性」を重視してきましたが、新たに開発される物件では、物流危機に対応し得る「付加価値」にも重きが置かれる傾向にあります。

トラック運転手の働き方改革にともなう輸送距離や輸送量の減少に対応するため、新たな拠点のあり方が検討され、企業それぞれのSC戦略における拠点の再編成が進められています。巨大消費圏周辺への配送力強化だけではなく、輸送可能距離が短くなることに備えた分散拠点や中継拠点として、日本各地に新たな物流要衝が誕生しており、配送ターゲットをより明確に絞り込んだ拠点を提供することで、SC再編での運び方を後押しします。

また、少子高齢化や人手不足に対応する、倉庫現場での人材確保も必要な取り組みといえます。倉庫現場の作業員不足によって荷役作業が停滞すれば、トラック運転手の拘束時間にも悪影響を及ぼすことになりかねません。雇用においても有利な立地や、庫内従事者のためのアメニティーにも力を入れる施設が多く見られます。

環境対策でも新しい時代に対応した施設開発が標準となりつつあります。エネルギー費の削減は物流コストの削減につながり、運送料金の見直しへと拡大することも期待できます。全館LED照明や、太陽光エネルギーの活用よるコスト削減などで、入居テナントにとっては環境対策での取り組みを進めることも可能となり、施設選択における重要な要素となってきています。

また、24年問題での重要なテーマであるDX化、自動化などにおいては、物流施設がその主な舞台となるだけに、施設サイドとして運用をバックアップする取り組みも進んでいます。コストがボトルネックとなる効率化ソリューションやツール導入を、あらかじめ施設の既存システムとして提供することで積極的なDX運用をバックアップし、物流改善に貢献する取り組みです。スタートアップや成長過程の事業者にとっては、大きなサポートとなるはずです。

さらに、業界一丸としての協働や共創の舞台としての施設利用も推進されています。一企業だけでは導入ハードルが高い自動倉庫を、シェアリングで運用するアイデアや、入居企業同士での共同配送、波動対応のコーディネートなど、物流施設が中心となって効率的な連携を実現する取り組みからは、物流施設発の新しいアイデアの誕生も期待できそうです。

荷主、運送会社、さらに物流施設などそれぞれの領域で積み重ねられている物流改革。ことしはまさにその正念場であり、将来振り返った時に「24年にこうしていれば」とだけは思いたくないものです。社会インフラとしての物流を守るため、業界一丸の取り組みはまだまだ深化できると信じて、その動向に注目していきましょう。

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