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幹線輸送の新時代へ前進、自動運転トラックの最新動向

物流業界全般

自動運転技術の進化により、物流分野での実用化が現実味を帯びてきています。昨年のコラムでは、自動運転トラックの社会実装に必要なレベル4技術について解説しましたが、その後、検証実験はさらに進展し、高速道路での本格的な走行実験も2025年に入って新たな局面を迎えています。本稿では、自動運転トラックの最新動向と今後の展望を整理します。

物流危機対応、新たなビジネス創出へ自動運転幹線輸送への期待

物流業界では、ドライバーの高齢化や人手不足が深刻化しており、特に長距離輸送における人材確保が大きな課題となっています。その解決策となり得るのが幹線輸送での自動運転トラックの社会実装です。高速道路での無人運転の実現により、運行の効率化や労働環境の改善が可能になり、さらに夜間や閑散時間帯の運行が容易になることで、交通混雑の緩和にも寄与すると考えられていますが、そのためには、高速道路上の一定条件下でドライバーが完全に不要となるレベル4自動運転トラックの運用実現が前提となります。

政府は、自動運転に関する開発目標を、2025年以降の「高速道路でのレベル4自動運転トラックの実現」として、技術開発を促してきました。国土交通省は25年度当初予算と昨年度補正予算合わせて「人手不足解消に向けた自動運転トラックによる幹線輸送実証事業」に6億2800万円を計上しています。実証事業を通して自動運転トラック運用を中心とした新たなビジネスを創出し、物流危機の解決につなげようとしています。

経済産業省 製造産業局 自動車課 モビリティDX室/国土交通省 物流・自動車局 技術・環境政策課「「モビリティDX戦略」<概要版>」よりP.7「「モビリティDX戦略」に関するロードマップ(第4章)」

研究機関、大手自動車メーカー、技術開発スタートアップによる限定環境下での走行実験を経て、高速道路での自動運転トラックの実証実験が実施されてきました。その結果、センサー技術の向上、収集したデータを活用するAI・機械学習による意思決定システムの進化、そして道路状況や運転環境に応じたソフトウェアアルゴリズムの高度化など、自動運転の基盤となる技術開発が加速しています。また、IT事業者と物流事業者が連携し、自動運転に最適化された情報基盤を整備するためのデータ連携システムの構築も進んでいます。

物流事業者の実証実験参加も増えており、実際の輸送ルートにおける商用化の可能性が検討されています。共同輸送や往復便のマッチングを通じてより効率的な運用が検討され、社会実装がより具体化しつつあるといえるでしょう。

2027年商用化に向けて、技術事業の拡大

自動運転トラックの商用化目標年度は、2027年に定められています。レベル4自動運転の実現に向けて、2025年3月3日から、新東名高速道路の駿河湾沼津サービスエリア(SA)~浜松SA間で、夜間帯における「自動運転車優先レーン」使用という条件下の実証もスタートしたばかりです。自動運転トラックが、静岡県下の100kmの区間を、夜間帯の専用レーンで安全・スムーズに運行できるかの実地検証へと、開発のステップが進んでいます。

国土交通省「新東名高速道路における自動運転トラックの実証実験を開始 ~自動運転車優先レーンを活用し自動運転トラックの走行をインフラから支援~ 」P.2より

この実験で検証されるのは、「合流支援情報提供システム」や「先読み情報提供システム」など、道路インフラからの支援の仕組み、車両技術と道路インフラを連携させた路車協調制御の技術開発です。これは、加速車線から合流する一般車両への対応や、交通事故、落下物、工事規制などの「先読み」情報を、道路側から情報提供することで、車両のスムーズで安全な運行を支援するものです。車両に装備したセンサーで認識できる範囲には限界があるため、インフラからの支援と協調した技術開発が不可欠です。国土交通省や経済産業省などの関係省庁や、大型商用車メーカー、自動運転技術開発メーカー、さらに高速道路事業者も実証に加わり、2025年度中に横浜と大阪間、さらには東北自動車道へと検証の場を拡大していく予定です。

実験車両には、「自動運転実証実験中」を示すマークやステッカーが貼付され、道路上の電光掲示板には「左車線自動運転実験中」の表示で注意を促します。もし実験走行中のトラックを見かけるようなことがあれば、自動運転トラックの社会実装へ着実に近づいていることが実感できるかもしれません。トラックの走行を妨げないよう注意も必要です。

物流業界における自動運転の波及効果

自動運転技術を活用することで、物流業界における新たな連携や共創の可能性も広がっています。積み合わせ輸送や共同輸送といった効率的な輸送モデルの確立が進むことで、サプライチェーン全体の最適化が期待されています。現状の自動運転運用では、運転手の人件費と比較して運送コストが増加することは避けられませんが、サプライチェーン全域で活用されることで、社会実装による収益化も見えてくるのではないでしょうか。

物流事業者のほか、加工食品事業や菓子メーカーが、自動運転トラックによる運送オペレーションの検証に着手することを発表しています。さらに異業種間の荷主連携や、幹線輸送だけではなくラストワンマイル配送への運用拡大などへと領域を広げる研究も続けられています。技術革新と法整備、インフラ整備が一体となることで、自動運転トラックが物流の新たな基盤となる未来に向け、確実な一歩が踏み出されているといえるでしょう。

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