民学連携で「グローバルCLOサミット」開催
サプライチェーン戦略最適化の術、学ぶ機会に
3月7、8日の2日間にわたり、早稲田大学早稲田キャンパスにて「グローバルCLOサミット2025」が開催されました。
昨年4月に成立した流通業務総合効率化法により、2026年4月から一定規模以上の荷主企業には、経営レベルで物流を統括する「CLO」(物流統括管理者)の設置が義務付けられます。日本ではまだ馴染みのないCLOの役割に対する関心が高まるなか、本サミットはロジスティクス・サプライチェーンマネジメント(SCM)分野で経営に携わるCLO候補者、企業の物流担当者ら約30人を対象とした人財育成プログラムとして企画されました。
「グローバルCLOサミット」の目的と意義
このサミットは、CLOに求められるリーダーシップやSCMの専門知識を習得するだけでなく、CLO同士のネットワークを構築し、協力体制を強化することを目的に開催されました。主催はコンサルティングファームのシグマクシスと早稲田大学グローバル生産・物流コラボレート研究所、協賛は野村不動産が務めています。
特に、米国で広まりつつある最高サプライチェーン責任者(CSCO)の概念を取り入れながら、CLOが単なるオペレーション管理者ではなく、企業戦略の中核を担う存在へと進化する可能性について議論されました。野村不動産からも数名が参加し、CLOに必要な資質や考え方について学びました。
CLO同士のワークショップで課題解決のアプローチを実践
今回のサミットでは、カリフォルニア大学サンディエゴ校のヘレン・ワン教授が2日間にわたり講義を担当。AppleやGoogleでのサプライチェーン構築の経験を活かし、CLOの役割について解説しました。ワン教授は、CLOは物流管理だけでなく、企業全体の成長を支える戦略的な意思決定を担うべきだと強調。CSCOの考え方を紹介しながら、サプライチェーンの最適化をリードする重要性について語りました。
またサミットでは、企業ごとに事前に共有された具体的な物流課題をもとに、参加者がチームに分かれて議論を行うインタラクティブなワークショップも実施。「このワークショップは、実際のサプライチェーンの問題に取り組み、戦略的思考を適用し、実行可能な解決策を開発するために設計されています。この2日間のワークショップで複雑な問題を解決するためのフレームワークを提供し、構造化されたアプローチを提示したいと思います。」(ワン教授)
初日のワークショップでは、各チームが与えられた複雑で解決が難しい課題に対し、制約を設けずチームメイトとアイデアを交換することで、解決策を出し合いました。2日目のワークショップは午前と午後の2回実施。午前の回では課題に対する実行可能な選択肢と、そのメリット、デメリットの抽出、午後のワークショップでは企業の「ピー・バリュー」(その人の視点がもたらす価値)を考慮し、企業にとってコスト削減の問題ではなく、価値創造の視点を踏まえた最適な解決策の提案を行いました。
ワン教授は、複雑な課題が絡み合い、課題が山積しているサプライチェーン事情についてこう説きました。「アルベルト・アインシュタインは『すべての困難の中に機会がある』と言いました。これは、今日のサプライチェーンの課題に完全に当てはまります。変革、混乱、そして複雑さは障害ではありません。それらは革新を導き、価値を創造するための機会となるのです。」
ワークショップ・懇親会を通じ国内CLO候補者のつながり強化
初日のプログラム終了後、立食形式の懇親会が開かれ、参加者同士の交流が深まりました。乾杯の挨拶を行ったのは、野村不動産株式会社 執行役員 都市開発第二事業本部 開発部・物流事業部担当の小島達也氏。
「今回のCLOサミットの趣旨に共感し、協賛という形で参加させていただきました。今後、LOGISTICS TODAYが事務局を務める『CLOサロン』でも、積極的に情報交換の場を提供したいと考えています」(小島氏)
また、野村不動産が取り組む企業間共創プログラム「Techrum」(テクラム)についても説明がありました。「野村不動産は物流施設デベロッパーではありますが、施設を提供するだけでなく、テナント企業の課題解決を支援する企業を目指しております。その一環の取り組みであるTechrumには、物流会社以外にも自動化機器メーカーやシステムベンダーなど110社以上の企業にご参画いただき、荷主企業様には『Landport習志野』のフロアにて、実際に自動化機器の検証などを行っていただいております。ぜひご注目いただければと思います。」(小島氏)
懇親会では、異業種の物流担当者同士が実務の課題や解決策について活発に意見交換し、新たな協力関係を築く場となりました。
今回のサミットは、日本国内の物流管理の最新動向を学び、CLOの役割を再定義する場となりました。特に、米国のCSCOの概念を取り入れることで、日本企業の物流管理体制の見直しや、サプライチェーン最適化に向けた新たな指針が示されました。今後もCLOの重要性が増すなか、こうした学びの場が企業の成長に貢献することが期待されます。