Techrum、共創で切り拓く物流最適化の道すじ 明らかに
物流法の改正を間近に控え、物流革新への取り組みはますます加速しています。荷主、物流事業者、さらには消費者まで、サプライチェーン全体を俯瞰した取り組みや、提案を活性化していかなくてはなりません。
野村不動産も、ただ物流施設の開発・提供にとどまらない物流革新の取り組みとして、企業間共創プログラム「Techrum(テクラム)」を展開しています。
物流革新に不可欠な、現場効率化のためのDXに向けて、ソリューションやマテハンなどを手がける企業によるコンソーシアムとして課題解決を図るのがテクラムです。
Landport習志野(千葉県習志野市)に開設している「習志野Techrum Hub」は、テクラムの協力パートナー企業それぞれのサービスを体感できる展示場として、すでに2000名以上が来場し、物流効率化のヒントを持ち帰っています。
今回、この「習志野Techrum Hub」が大胆にリニューアルされました。たくさんの来場者に親しまれてきたテクラムをあえてリニューアルする狙いや、そこにこめられた思いについて、3人の担当者に話を聞きました。
<中央>野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業企画課 課長代理 太尾田幸太氏
<左>野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業企画課 朝倉南氏
テクラムがリニューアル、物流最適化の道すじをよりわかりやすく紹介
LOGISTICS TODAY
まず、今回のテクラムのリニューアル、その目的についてお聞かせください。
太尾田幸太氏(野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業企画課 課長代理)
来ていただいた方々にその物流に関する自社の課題であったりとか、ニーズを気づいていただいて、それを我々がきちんと収集ができるという仕組みを構築するためにリニューアルをしました。
これまではそれぞれのメーカー様とベンダー様が個別に展示をされていたので、来ていただいた方は自社の実際の入荷だったり、出荷の現場というのがイメージしづらい状態になっておりました。この度、それを入荷から出荷までラインとして繋ぐことで、実際に自社の現場というのをイメージしやすいような形に展示の仕方を変えて、目的を達成しているところです。
LOGISTICS TODAY
これまでは、全体最適としての運用イメージが見えにくかった、今回のリニューアルは、その改善が目的ということですね。
太尾田氏
これまでは、ピッキングから出荷までの一つの部分だけを展示していました。それをピッキングから出荷というのを一連の流れでつなぐことによって、お客様がまさにやられている工程というのを、そこに再現をして見せることで、より実際に実現のイメージしやすくしたということになります。
2024年10月に実施したこの大胆なリニューアルは、多数の来場者が訪れていた実績がありながらも、よりわかりやすく課題解決のヒントを明示するための必要不可欠な取り組みだったことがわかります。実際、リニューアル後の来場者からも好評で、相談や提案の要望も以前より増えているといいます。
LOGISTICS TODAY
朝倉さんは、実際に見学会を案内しておられますね。生の声や感想なども、たくさん聞かれているのではないですか。
朝倉南氏(野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業企画課)
入荷から出荷のラインに沿ってレイアウトを変えたので、やはり理解度というところはかなり高まったのかなと思います。単独のブースではなく、前後の工程がさらに付け加わることによって、自分たちだとこのオペレーションがこういうふうに機械化されるんだろうなみたいなところのイメージがつきやすくなったのかなと。それがまた「もっと提案してほしい」です というようなお声につながっていると考えています。
LOGISTICS TODAY
リニューアル後の見せ方、案内の仕方で、こだわっていることなどはありますか
朝倉氏
全ての機械の説明に入る前に、まずここはこの工程の紹介ですよ というところをイメージしていただけるように、事前の説明のところを意識してやってますね。この荷物が例えば仕分けされて、ここから梱包のゾーンに入っていきます みたいなところの説明を付け加えております。
Techrum Hubは「気づきの場」
LOGISTICS TODAY編集部も実際にテクラム見学会に参加しました。
見学会では、業種・品物・荷姿ごとに最適なソリューションの組合せを、実作業現場の流れ、”物流現場のストーリー”に沿って体験することができます。ピッキングの自動化から梱包の自動化へ、さらにそこから出荷バースへの自動搬送など、ソリューション単体だけではなくその連携で生産性が上がる様子も確認でき、見学者それぞれに最適な運用をイメージしやすい仕組みとなっています。まず、物流全体をストーリーとして捉え、課題解決のヒントを明確にした見学動線の設定も、これまでの経験を活かして、より全体最適化への道すじが見えやすく工夫されています。
LOGISTICS TODAY
見学に訪れる方からは、どんな相談や悩みごとが多いのでしょうか
太尾田氏
まずそもそも自社の課題であったりとか、何が必要なのか、ニーズというところが気づけていないというお客様が一番多いのかなと思っています。いろいろと見ていただくことで刺激を受けていただいて、そこから我々の方で拠点を見させていただきましょうか とか、こういったパートナー様をご紹介しましょうか という形で、ニーズだったり課題というのを見つけるように促しています。
具体的な効率化の工程やマテハンを目指しての来場以外にも、自動化・省人化の入り口がわからない、どこに課題があるのかわからない という悩みを持ったまま訪れる人も少なくないようです。すでにDXに取り組んでいる事業者にも、これからの一歩を踏み出す事業者にとっても、それぞれに足りない取り組みを知る”気づきの場”となっているようです。
テクラムが育む、新たな連携の広がりと課題解決
テクラムは競争領域ではなく、協調領域での物流現場最適化を目指す取り組みです。今回のリニューアルでは、参画パートナー企業間の連携構築という点でも効果があったといいます。展示の動線変更にともなって、マテハン同士をつなぐといった作業も行われました。つなぎ方や設置ゾーンの工夫についての話し合いを通じて、マテハンメーカーやベンダー同士の連携も深まったといいます。リニューアルによって物流の工程をつなげたことで、ベンダー同士のつながりが強化されたといえるでしょう。
テクラムは、荷主・物流企業の課題解決のため多様なパートナー企業とのマッチングを実現。
当初、100社を目標としていた参加パートナー企業は、すでに110社超を数えます。参画パートナーが増えることで、ユーザーの選択肢も広がり、個々では導入しにくかったソリューションを、連携した運用などで比較、検討しやすくなっています。
LOGISTICS TODAY
今は見学者の立場の方々が、新たな選択肢を提示することもあるかもしれませんね。
藤﨑潤氏(野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 副部長)
荷主企業様と物流企業様が、もっとテクラムの中に入ってきていただいて、一緒に物流課題を捉えながら、課題を解決するために多くの企業同士が集まっていけるような、そういう集まりにしていけたらいいな と思っています。物流で何か困ったら、一番に相談していただけるような、そういう課題を持つ企業様と提案策を示すことのできるパートナーのつながりの場となればいいな と考えています。
LOGISTICS TODAY
物流革新の中で、それぞれの果たすべき役割も変化しています。テクラムは、不動産デベロッパーが今後果たすべき新たな使命として、DX自体に多大な投資を必要とする難題にも、野村不動産としての後押しを目指しているように思えます。
藤﨑氏
(投資をしっかりと行い先導する)そこに踏み込んでいくことによって、我々の倉庫を使っていただける方も増える。物流拠点が本当の物流課題を解決する拠点、物を置くだけでなく共に解決する拠点になっていけるのではないか と。そのような倉庫をつくっていきたいと思っています。
今後、CLO選任などを経て物流のあり方も変化します。テクラムがつなぐ連携強化の取り組みは、こうしたCLO同士の勉強会のようなものへの発展を目指すといいます。
藤﨑氏
パートナー企業様は、物流にずっと携わられた専門家たちが揃っていますので、その知識をこのテクラム内に留めておくというよりも、外にオープンにしていきたい。例えば各企業のCLOが来るというよりも、CLOに将来なっていくだろうという人材の方々に、保有する知識・経験をシェアして、それらの全体最適な視点や決断をもって個々の企業の自動化や商品化が進んでいくような、そういう種まきの場としてのテクラムを発展させていければと考えます。来期ぐらいのスタートを目指してそのような勉強会を今計画しているところです。
LOGISTICS TODAY
今後、テクラムは今後の物流を先導する人材候補が集う場になるのかもしれませんね。
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最後に、3人の担当者からテクラム見学を検討している方々へのメッセージです。
朝倉氏
パートナー企業様30社、70ソリューションが常設の場で見れるというところは、全国でもここだけではないかと思っておりますので、あまり気負いせず、本当に軽い情報収集くらいの気持ちで訪れていただければと思います。多くの皆さまのお力添えができれば幸いです。
太尾田氏
パートナー企業様もたくさんいらっしゃるので、まさに相互連携の連鎖を生み出す為に、我々の方で皆さまの課題に応じて様々なソリューションと組み合わせて最適な提案をさせていただけたらと思います。ぜひ一度いらしていただき、いろいろお話をお伺いできればと思います。
藤﨑氏
さらに厳しい状況になってくるその前に、やはり動いておくというのが大事なことだと思っていますので、その始まりとしてこのテクラムを活用していただいて、私たちを含めてパートナー企業様もすごく本気で自動化やDXに取り組まれている方も多いので、ぜひテクラムを使っていただいて、自社の物流改善につなげていただければと思います。皆さまのご来場をお待ちしております。