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日本の物流が変わる-「自動物流道路」とは

物流業界全般

2024年問題への取り組みとして、政府は昨年、法改正など矢継ぎ早に対応してきました。あるべき未来の物流インフラとしての「自動物流道路」についても、官民学での検討会が設置されるなど急ピッチでの検証が続いており、具体的な方向性も明らかになっています。

自動物流道路は、物流危機への対応や温室効果ガス削減に貢献する新たな物流形態。増加する物流需要や、ドライバー不足などに対応し、なおかつクリーンエネルギーで環境にやさしい持続可能な物流を実現するインフラとして、特に高速道路などでトラック輸送に代わる幹線輸送手段となることが期待されています。

これまで人手に頼らざるを得なかった長距離輸送を、完全自動化・無人化、さらに24時間体制で運用可能となれば、その効果は計り知れません。渋滞による遅延を心配することなく、輸送量の確保、拡大も想定できます。併用されるトラックによる幹線輸送でも混雑緩和が期待でき、交通事故とCO2排出という、これまでの物流が抱える宿命ともいえる課題においても、大変革となることは間違いありません。

もはや夢物語ではない、2030年代実現へ物流インフラ革新

高速道路の中央分離帯の地下部分や、路肩・法面などを自動物流の専用道路として整備して無人化・自動化された輸送手法と連携する物流網は、まるでSF映画のようですが、政府の「2030年度に向けた政府の中長期計画」における主要施策の1つにも掲げられ、30年代半ばまでに無人物流網を実装するという目標が設定されていますから、決して荒唐無稽な計画ではありません。自動物流道路に関する検討会では、スイスで先行する検討事例が参考となっています。スイスでは26年に第一区間の着工を予定、31年の運用開始、45年の全線運用に向けた自動輸送カートの具体的なイメージも公開されており、日本での運用においても参考事例となります。

令和6年2月16日我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議「2030年度に向けた政府の中長期計画(ポイント)」よりP.6「主要施策のポイント(3)多様な輸送モードの活用推進」

昨年7月には5回目の検討会を経て「自動物流道路のあり方 中間とりまとめ」が公表され、そのコンセプトや課題などが具体化されています。

国土交通省自動物流道路に関する検討会 中間とりまとめ(概要)~「危機」を「転機」とする自動物流道路~「別紙1」より【自動物流道路のイメージ】

この中間とりまとめでは、人手不足などの物流危機を転機と捉え、カーボンニュートラルなどの社会の変化に対応するための「自動物流道路のコンセプト」が定義されました。「持続可能で、賢く、安全な、全く新しいカーボンニュートラル型の物流革新プラットフォーム」というコンセプトのもと、物流の全体最適化、物流モードのシームレスな連結、カーボンニュートラル実現を目指します。自動化による人的リソースの制約を受けない小口・多頻度輸送の実現、物流専用の省スペースでの安定輸送、輸送と保管を統合したバッファリング機能で需要の波の平準化、オフピークの活用など物流全体の効率化を、社会実装のポイントとしています。

社会実装に向けた課題とは?またその現状は?

社会実装に向けて、まずは想定ルートでの社会実験、「第1期区間」の先行ルートでの検証を経て、長距離幹線構想へと具体化する目標が公表されています。

実験区間・先行ルートの設定においては、10年間での社会実装を目指すため、前提となるフィールドの構築に大規模な整備や時間を要さない、新東名高速道路の建設中区間である「新秦野-新御殿場」間などでの検証が想定されています。とはいえ、地上部の活用の場合、中央分離帯や路肩では本来必要な機能との調整、また、地下空間の活用の場合、現地状況により工事期間や整備コストが大きく変動する可能性など、想定ルートの具体的な区間での空間確保にあたっては、自動輸送カートの寸法や重量、走行速度、走行頻度などの諸条件を踏まえて検討する必要があり、具体的な規格を早急に設定した上で、実現に向けて更なる詳細な構造検討を進めることが必要だとしています。

また自動物流道路の活用には、当然既存の物流モードとのスムーズな接続も必要であり、物流倉庫の集積状況や、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアやインターチェンジ、貨物鉄道駅、港湾、空港等の物流拠点の配置や、既存の道路ネットワークとの接続によるシナジー効果、周辺の道路交通への影響などに配慮する必要があります。

国土交通省マーケットサウンディング参考資料よりP.6「【参考】輸送手法・拠点における自動荷役イメージ」

物流インフラ革新の鍵を握る技術開発と連携

搬送手段としてイメージされる自動輸送カートには、11型標準パレットでの積み込み効率最適化や、長距離走行性能や速度、環境性能など、持続可能な社会インフラとしての規格を定めることが急がれます。また、自動物流道路が効果を発揮する長距離幹線輸送での実装に向けては、初期コストやランニングコスト、需要予測や事業性分析など料金設定や事業形態、事故時の対応など法体系の中での整理、必要な制度設計も急がれます。

既存の輸送モードとの連結においては、こうした自動物流道路の専用規格に特化した物流拠点機能の見直しも必要となってくるのではないでしょうか。中間とりまとめでは「自動物流道路の拠点という物流モード間の荷物の接続のみに特化した空間でのより効率的・合理的な積替え手法について技術開発を図るべき」と提言されています。物流デベロッパーの今後の施設開発も、自動物流道路への接続、自動物流道路での運用に最適化した機能開発などで、新たな施設の標準形が提示されることも想定されます。

社会インフラとしての機能から考えれば、民間の競争による技術開発以上に、行政が開発の方向性を示すことで、開発リソースを集約し、技術・ノウハウの確立を図っていく必要もあるでしょう。走行中給電技術や、都市内物流での標準化された荷物とのより効率的な連携など、自動物流道路が基幹となることで、これまで停滞していた技術革新、物流インフラ革新が加速することも期待されます。

また、官民連携や技術開発の加速、法整備、市民の理解促進など、今後の物流を支えるキーワードである”連携”や”標準化”取り組みを、より具体化していくことも不可欠です。関係省庁、関係事業者、大学などが連携して、オール・ジャパン体制での取り組みが、自動物流道路を中心に活性化することで、持続的な物流の未来を切り開く革新的なインフラが確立されるはずです。

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