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倉庫作業の「見える化」に欠かせないデータの活用

物流業界全般

少子高齢化が進み、どの業界でも人手不足が続き、DXによる自動化や省人化、効率化を図る企業が増えています。製造業や物流業の企業でも、倉庫の作業の効率化が課題だと感じている経営者は多いでしょう。

倉庫のDXについては、自動倉庫を導入する企業も増えていますが、初期費用のコストが大きく、扱う荷物の量がコストに見合うのかどうか十分な検討が必要です。また、最近は電子商取引(EC)や個人間の売買が増えたこともあり、荷物の小口化が進み、機械化が難しい作業も多く残っているのも実情です。

こうしたなか、現場での作業や人の動きなどを分析し、効率的な進捗管理や工程改善に業務を可視化し、分析する業務改善システムを導入する会社が増えています。倉庫の業務改善システムとは、どのようなものなのでしょうか。

小口化や個別化が進み、庫内業務は複雑化

国土交通省「全国貨物全流動調査(物流センサス)」によると、EC市場が拡大するにともない貨物の小口化や個別化が進み、配送件数も増加傾向にあります。1件あたりの貨物量は1990年に2.43トン、2010年に0.95トン、2021年には0.83トンと減少しているのに比べ、配送件数は1990年度の3日間の調査期間中、1万3656件だったのに対し、2021年の調査では2万5080件と2倍近くに増えています。

国土交通省WEBサイト「第1回 自動物流道路に関する検討会 配付資料」(https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/buturyu_douro/doc01.html )の資料3「検討の背景②物流を取り巻く現状と課題」(https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/buturyu_douro/pdf01/03.pdf)より

同じような製品を大量に梱包したり、ピッキングしたりする作業とは違い、臨機応変な対応も求められる貨物の小口化や個別化による作業は自動化や機械化にはあまり向いておらず、人の手による作業のほうが向いています。しかし、少子化による人手不足はどの業界も同じで、物流業界も例外ではありません。このため、できるだけ作業の効率化と平準化を図り、人数を増やさなくても業務対応力を上げていくことが欠かせないのです。 

ただ、こうした業務の改善に取り組むときに、犯しやすい過ちがあります。それは、机上の計算だけで、改善策を作ってしまうことです。 

もし、「一人で60分かかる作業を60人でやったら1分で終わるのか」と聞かれたら、なんと答えるでしょうか。もちろん「そんなことは無理だ」と答えるはずです。なぜなら、作業には段取りがありますし、60人に均等に仕事を振り分けることはできません。その前に、その作業場に60人は入れるとは限りません。 

しかし実際には、作業の手順や仕事の割り振りを考えずに「人を増やせば仕事がはかどるはず」「ベテランを増やせば仕事は効率的になる」などと、詳しい分析もせずに安易に人の配置や作業の手順を変えてしまうことは少なくありません。そして、こうした変更は大抵の場合、うまくいきません。 

うまくいかない理由は、作業の課題を明確にせず、実情にあった改善策を講じていないからです。まさに現場を見ない、机上の空論といえるでしょう。 

そうならないためにも、作業の改善や効率化を検討する前には、かならず現場の詳細なデータを集め、数字や指標で作業の現状を視覚化することが欠かせません。つまり、倉庫作業の「見える化」です。

ITやデジタルによる「見える化」で課題解決を図る

見える化とは、業務や作業の状況を数字や指標で、誰でもわかるようにし、課題や問題点を共有することを言います。そして、それに基づいて組織全体で解決に取り組みます。

見える化にあたって、まずしなければならないことは、データの収集です。倉庫内の作業であれば、どのような手順で仕事をしているのかを整理し、一つの作業にどのくらいの時間をかけているのか、手待ち時間はどれくらいなのか、一つの工程が終了するのにどのくらいの人員や時間を要するのか、といったことを数値化する必要があるでしょう。

そうしたデータを収集するには、一人一人の業務内容や工程の流れなどを記録し、集計するという作業が必要です。しかし、業務の記録や収集、分析する作業は担当者にとってかなりの負担になる可能性があります。もし、そうした業務がサービス残業につながってしまうようなら、やがて誰もやらなくなってしまうでしょう。そこで活用を考えたいのが、庫内業務の可視化により業務を改善するシステムです。

「倉庫業務管理システム」「庫内作業可視化ツール」「作業可視化・分析システム」など、メーカーによってさまざまな呼び方があり、それぞれ異なる機能も持っていますが、基本的にハンディーターミナルやタブレット、専用デバイスなどで収集した作業者のデータとWMS(倉庫管理システム)の連携から、作業スタッフの生産性、全体の工程でのボトルネックなどのデータを自動的に収集し、分析します。つまり、作業員は普段通り仕事をしているだけで、勝手にデータが蓄積していくというわけです。

そうすれば、データを収集するために特別な作業をする必要はありませんし、普段通りの業務の中からデータを収集できます。そして、そのデータを用いた詳細で精度の高い分析ができるようになり、さらにその分析結果を作業計画の改善に活用できます。

たとえば、工程上、停滞しやすい作業があれば、人員や作業手順、ロケーションを見直すことが必要ですし、個人によって時間や精度にばらつきがある場合は、効率的な手順を共有してスキルの平準化も図れます。

単に作業の効率化を図るだけでなく、スキルの継承や人材育成にも役立つでしょう。
現場の実情に合わせた作業工程の改善を図るには、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すPDCAサイクルが欠かせないと言われます。

しかし、計画を立てたり、評価したりするときに、正確なデータがなければ、現実に沿った計画は立てられませんし、的確な評価もできません。こうした継続的な改善にも、庫内の見える化は大いに役立ちます。

作業の効率化を図りたいが、課題の洗い出しがうまくいかない。人材リソースを最大限に活用してさらなる効率化を目指したいと感じている場合は、ITやデジタル活用による作業状況のデータ把握を考えてみてもいいのではないでしょうか。

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