テクラム、4つのマッチングサービスが変える物流業界のこれから【後編】
前編ではLOGISTICS TODAYの赤澤裕介氏が、物流業界におけるテクラムの役割について野村不動産の藤﨑潤氏と大下智久氏から話を聞きました。そちらではテクラムが競合同士をつなぐ仲介役になり得ることが示され、協働化に向けての具体的な施策が共有されました。
後半は視点を変え、テクラムが展開する荷主・物流業者向けのマッチングサービスについてインタビューをしてもらいます。
<右>野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業企画課 課長代理 大下智久氏
に聞く
(インタビュアー: 赤澤裕介LOGISTICS TODAY 編集長)
マッチングサービスは変化に即応することが難しい企業のためのもの
大下智久氏(野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業企画課 課長代理)
テクラムが展開するマッチングサービスには「配車」「課題解決」「空床支援」「人材募集」の4つがあります。なかでも配車と課題解決は新しく、今年の4月からはじめたばかりです。
赤澤裕介氏(LOGISTICS TODAY編集長)
まずはこのようなサービスを提供するに至った経緯をお伺いできますか。
大下氏
いろいろな現場に入らせていただいて感じたのは、「課題を先送りにしていることが課題」ということです。感染症の流行をはじめ、社会が変革を迫られるポイントはいくつもありました。一部の先進的な企業は対策に乗り出していましたが、物流業界全体としての変化は緩やかでした。自社でできることが限られていて、変化に即応することが難しい企業は、マッチングサービスを必要としていると考えたんです。
4つのサービス、それぞれの強み
ここからはそれぞれのサービスの強みや特徴を深掘りしていきます。まずは配車サービスである「野村不動産配車サービス powered by ハコベル」を見てみましょう。
これは配車マッチングサービスの「ハコベル」とコラボレーションしたもので、季節波動による荷物の増減、緊急配送などに対応します。スピード感が強みで、見積もりにはほぼ時間がかからず、マッチングに至るまでの平均時間も3分程度です。特に軽車両のマッチング率は90%以上と非常に高い数字を弾き出しています。当日配車が可能なのでまさに「今車が欲しい」というタイミングでの利用が推奨されます。通常のハコベルとの違いは料金にあります。Landportのテナントは同サービスを特別料金で利用可能です。
物流施設は首都圏と郊外とで二極化していく動きがあります。配車マッチングサービスは特に小分けの荷物が多い首都圏で真価を発揮します。大下氏も「このサービスの併用をおすすめすることでLandportの商品性を高めていきたいと考えています」と話します。
2つ目は課題解決のマッチングサービスです。これは掲示板形式のサービスで、各事業者が自分たちが抱えている課題を自由に書き込むことができます。テクラムチームはそれらの課題に対して何らかの提案をすることを目標に、日々書き込みに目を通しています。
まずはテクラムで培った知見を武器に情報を提供します。場合によっては具体的な提案までセットで行い、企業側に受け入れられれば採択・導入まで漕ぎ着けることもあります。藤﨑氏は「今課題解決に取り組んでいるのはテクラムの関係者だけですが、ゆくゆくは社内全体を巻き込んだ討論ができればいいと思います」と話しました。
3つ目は空床支援です。Landportの入居者は空いてしまっている区画を無料で転貸・寄託することができます。マッチング自体は野村不動産が行うので、パートナーを探す手間はかかりません。
物流施設の賃貸は床面積単位が基本です。想定していたよりも荷物が少なくなってしまった場合、空いてしまった区画は料金を支払っているにもかかわらず活用できていない、いわゆるデッドスペースになってしまいます。その点、空床支援は貸したいテナントと、借りたい荷主・物流事業者をつなぐ架け橋になり得ます。また、拠点を引っ越すタイミングで、少しの間だけ倉庫を借りたいといったニーズにも対応することができます。
最後のサービスは人材募集支援です。テナントはLandportのホームページ、外部求人サイトに無料で求人広告を掲載できます。必要なら原稿を改善するためのアドバイスを受けることも可能です。かねてから人手不足が叫ばれる物流業界にとって人材募集は死活問題です。広告料も無視できる額ではないため、広告の無料掲載はテナントにとって大きなメリットになります。
企業のテクラム加入は技術力への自信の表れ
企業間の共創・協働を促すために発足したテクラム。その強みであり、特色でもあるのは加入のハードルの低さです。テクラムには厳格な加入条件などはなく、特定の物流課題を解決する力があるかどうかだけが問われます。
しかし、課題解決ができるということは、その企業が一定以上の能力を有していることの証明に他なりません。テクラムは技術を提供する企業側の自信と、それに対する野村不動産の信頼とが合わさって成り立っているといえるでしょう。
赤澤氏
テクラムに相談が寄せられていないだけで、実際にはまだまだ困っている企業はたくさんありますよね。
藤﨑氏
おっしゃる通りです。なので本当はもっと気軽に登録できる仕組みをつくるべきなのかもしれません。
大下氏
我々としてはもっと課題を投げてもらいたいという気持ちがあります。
一つの企業ができることには限界があり、人手不足が深刻な物流企業においてはその傾向がより顕著です。テクラムが提供するマッチングサービスは、そのような物流業界の現状を俯瞰した上で生み出されました。またテクラムには物流業界に長く携わってきた藤﨑、大下の両氏をはじめとする野村不動産ならではの視点・考え方も反映されています。野村不動産が変える、物流業界のこれからにご期待ください。