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年間荷役16%削減目指す、
パレット標準化への指針とは(後編)

物流業界全般

物流業界における一大転換期となった2024年、長らく議論されてきたパレット標準化も大きく動き出しました。

国土交通省が主導する「官民物流標準化懇談会 パレット標準化推進分科会」は、2024年6月28日に、パレット標準化推進へ向けた「最終とりまとめ」を公表しました。2021年9月の第1回協議から、12回に及んだ分科会での議論の集大成となります。

標準化されたパレットを共同利用することで、物流業務の効率化、物流従事者の働き方改革、環境負荷の低減を目指す取り組みは、この国の物流業界における長年の懸案でもありました。一貫パレチゼーションの実現は、総論賛成ながら、運用においては乗り越えるべき課題も多く、民間単位では各論反対となりがちです。サプライチェーン全域での物流改善というテーマに向けて丁寧な論議を重ねてきたことが、今回の最終とりまとめにつながったことは歓迎すべきことでしょう。

パレット標準化を目標におきながらも、目標達成の基準もこれまでは明確ではありませんでしたが、今回の取りまとめでは、実現に向けてのロードマップと、標準化の取り組みや成果についての具体的な数値目標(KPI)も示され、もはや指針ではなく、関係者の講ずるべき取り組みがより具体的に共有されることとなりました。

パレット標準化実現に向けたロードマップ(出所:官民物流標準化懇談会 パレット標準化推進分科会 最終とりまとめ)

標準パレット保有量を30年度には5000万枚以上に

最終とりまとめで定義された標準仕様のパレット、いわゆる「標準パレット」とは、規格面では平面サイズ1100mm×1100mm、高さ144mm〜150mmとすることや、プラスチック製または木製のものと定められ、すでに市場で広く運用されている11型を基盤として、「タグ・バーコードの装着が可能な設計」となりました。パレットの紛失防止や検品作業効率化なども見据えて、一貫パレチゼーションを加速させる規格に定められました。

標準パレットが物流利用における標準となるまでには、まだまだ標準パレット自体の供給を増やすこと、標準外のパレットからの転換が必要です。とりまとめで示されたKPIでは、平パレット生産量に占める標準仕様の11型パレットの割合が22年度で26%でしたが、30年度には50%以上と倍増させることを目標に設定しています。実際に市場での流通量増加のため、保有数量でのKPIも設定され、22年度の2651万5728枚から30年度には5000万枚以上まで倍増させるとしています。

仕分け・回収作業の主体明記など、共同運用の課題も整理される

パレット標準化では、規格の標準化以上に「運用面での標準化」が議論されてきました。パレットの循環運用スキームを、誰が中心となって、パレットの仕分け・回収などを構築していくのかなど、長年の懸案でも1つの方向性が示されました。

今回の最終取りまとめにおいては、必ず推進していくべき標準パレットの運用方法として、レンタル方式が採用されました。現在、複数のレンタルパレット業者が存在し、その事業スキームでレンタルパレット運用も広がっているため、標準運用に枠を広げても、管理運営組織をレンタルパレット事業者とすることでスムーズな移行が可能となると想定したものです。

運用においては、売主と買主間の売買契約、レンタルパレット業者とのレンタル契約、運送会社との運送契約において、パレットの仕分け・回収作業の主体を明記することとしました。発着荷主とレンタルパレット事業者間の契約では費用負担のあり方についても明記した上で、契約に基づいて各主体で費用負担が行われる体制を整えます。発荷主だけではなく着荷主や倉庫事業者も、享受する利益と、パレットの紛失や流出などにかかる費用負担などを協議し、賃貸権者が賃貸期間に応じた利用料を負担する方式へと環境整備していくこととなります。

共同プラットフォーム構築で、日本の物流システムの価値向上を

パレット運用の標準化としての最終目標となるのは、レンタルパレット事業者の連携による「共同プラットフォーム」による運用が実現することです。レンタルパレット運用の共同プラットフォームが完成すれば、共同回収、共同仕分け、共同システムでの調達、運営管理、共同配送などへと広げていくことで物流の生産性を上げ、日本の物流システム自体の価値向上に貢献するはずです。まだまだ調整や討議も必要となりますが、ぜひとも実現してもらいたいものです。

「共同プラットフォーム」のイメージ(出所:官民物流標準化懇談会 パレット標準化推進分科会 最終とりまとめ)

前述のKPIにおいては、レンタルパレット事業者を主軸とする運用の拡大に向けて、レンタル平パレット現存保有数量に占める標準仕様パレットの割合を現状の76%から85%まで引き上げること、また、レンタルパレット事業者間で共同回収を実施している拠点数が23年度には42か所であったのに対し、30年度には400か所以上と10倍以上の設置を目指しており、共同プラットフォームに向けた基盤の整理を30年度に向けて着々と整備する予定です。

パレット標準化による成果として1人あたりの年間荷役作業時間315時間以下(20年度は375時間)、16%減に設定したKPI達成が求められ、さらにその先を目指さなくてはなりません。物流に携わるひとりひとりが、パレット標準化の意義を理解して取り組むことが、世界に輸出できるような日本の物流システム完成につながるのです。

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