野村不動産のLTMが追求する、
テナントに寄り添った倉庫運営とは。
野村不動産には物流施設のテナントを支援する「LTM(ロジスティクス テナント マネジメント)」というチームが存在します。LTMは野村不動産が掲げる「現場顧客主義」を体現したような存在。現場の声を吸い上げ、形にしていくことが彼らのミッションです。
今回はテナントとの架け橋ともいえるLTMの取り組み、その裏にある野村不動産の理念について、LOGISTICS TODAY編集長の赤澤氏がインタビューを行いました。
<中央>野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業三課長 水上悟氏。
<右>野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業三課 課長代理 清水秀幸氏。
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(インタビュアー: 赤澤裕介LOGISTICS TODAY 編集長)
LTMは不動産業界のプロフェッショナル集団
赤澤裕介氏(LOGISTICS TODAY編集長)
今日は、野村不動産が全国的に展開する物流施設のテナント企業をサポートする「LTM」の取り組みについて、プロジェクトに携わる稲葉さん、水上さん、清水さんのお三方にお話を伺います。まずは簡単に自己紹介をお願いします。
稲葉英毅氏(野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 部長)
こんにちは。私は2006年に野村不動産に入社し、18年以上不動産業界に携わっています。野村不動産が物流施設の事業を始めた頃から関わっているので、Landportなどの施設が全国に展開されている現状は感慨深いものがあります。
水上悟氏(野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業三課長)
2007年に新卒で野村不動産に入社し、最初の4年間は住宅営業を、その後は法人営業を経験しました。2024年からLTMで物流に携わりはじめ、物流業界の大きな転換期を実感しています。新しい技術やトレンドが日々台頭し、お客さまのニーズも多様化しているため、勉強することが多く、やりがいを感じています。
清水秀幸氏(野村不動産株式会社 都市開発第二事業本部 物流事業部 事業三課 課長代理)
私は新卒で住宅系不動産会社に入社し、2023年に野村不動産に転職しました。物流不動産業界でのキャリアは2013年から10年以上になります。水上の言うとおり、最近の物流業界の変化は非常に興味深く、日々の業務に充実感を感じています。
赤澤氏
ありがとうございます。皆さんが不動産業界のプロフェッショナルであることがわかりました。では、次にお三方のお仕事、特に野村不動産における「LTM」についてお聞かせください。
野村不動産におけるLTMの役割とは?
LTMは、野村不動産が展開する物流施設のテナント企業の倉庫運営をサポートするためのチームです。稲葉氏は、この取り組みについて「物流施設をただ提供するだけでなく、テナント様のニーズに迅速に対応することで、より良い施設運営を目指しています」と述べます。
LTMの具体的なサービス内容には、人材派遣や営業倉庫申請サービス、空床支援などが含まれます。例えば、人材派遣サービスでは人材不足のリスクを軽減するため人材派遣会社と提携し、採用活動を支援します。また、営業倉庫には手間と時間がかかるため、その作業工程のサポートに尽力しています。空床支援ではテナントが契約したスペースに空床が発生した場合に、その空床を野村不動産が関わる他の企業に無償で営業・提案し、空きスペースの有効活用を実現しているのです。
倉庫で働く方々の働き方に対する取り組みにも、野村不動産は力を入れています。カフェテリアの充実や無人コンビニの設置、キッチンカーなどを導入することで、施設内のアメニティの充実化を図っています。野村不動産が手掛けるLandportのように、現在の物流施設は大規模化しており、1時間の休憩の間に大規模施設内から出かけることは容易ではありません。施設内で働かれる方々の従業員満足度を高めることは、物流施設提供者の仕事のひとつだと考えています。
物流施設を運営する際には、従業員の安全への配慮も忘れてはいけません。LTMは毎月開催されるテナント定例会で得られた現場でのフィードバックをもとに、バースの先端部分にラインを引いて目につきやすくする、鉄の扉を一部ガラスの扉に変更して人の存在を確認できるようにするなどの対策を迅速に行っています。
現場の生の声を拾い上げ、具体的な行動に移すことがLTMの特徴であり、最大の強みでもあります。現在60社超ほどのテナントと契約していますが、各定例会を通じて各々の要望を収集し、それに応じた改善策を迅速に実施します。リアルな現場の声を取り入れることで、常に物流施設のあり方をブラッシュアップできるのです。
得られたフィードバックは現状の物流施設の改善のみならず、新しく建設する物流施設の設計にも活かされます。そのため清水氏は「テナント数がどれだけ増えても、各テナントとの丁寧なコミュニケーションを心掛けています」と語ります。
野村不動産が考える、テナントにとってベストな物流施設運営のあり方の追求
昨今、物流施設においてDX化(デジタルトランスフォーメーション)の流れが加速しています。野村不動産も業界の流れを汲み取り、着実にDXを推進してきました。しかし、DXすることが目的となってしまい、テナントの利便性を考えられなくなることは避けなければいけません。
例えば、DX化によって効率よく倉庫運営するためには、導入する機器に対する専門的な知見が要求されます。つまり、DXを導入しても、テナント側が上手く活用できないと意味がないのです。そのため、野村不動産ではDX化に付随して、その運営サポートも手厚く行っています。
その他にも、野村不動産はDX化で倉庫業務の見える化を実現しています。しかし、倉庫内を可視化できても、そのデータを活用できなければさらなる業務フローの効率化は叶いません。野村不動産はテナント企業が倉庫を借りることでメリットを最大限得られるように、物流施設をただ提供するだけでなく、あらゆる面から「倉庫運営」をサポートしています。
そのためには、野村不動産グループによる製・販・管一貫体制とお客さまのパートナーとなり、共に“チーム”であることを徹底して活かしたマネジメントが必要不可欠です。テナントのニーズに寄り添った施設づくりによって、多くの企業にご利用いただいています。
物流業界は今、2024年問題から端を発して大きな転換期を迎えています。それは、物流施設を建設する野村不動産も同じです。ただ倉庫を貸す企業ではなく、倉庫運営に関わる問題を解決する糸口を提供できる会社であり続けることが野村不動産の目標です。例えば、倉庫で働かれる方々の採用サポートとして、人材派遣サービスのLINEスキマニやTimeeと提携したり、配送業者とも協業しています。
野村不動産が理想とするテナントとの永続的な関係性とは?
野村不動産は、テナントとの永続的な関係性を築くことを重要視しています。稲葉氏は「お客様と永続的に関わっていくことが事業・企業の発展につながる」と強調します。なぜなら、物流業界においては、オフィスと違って大規模な借り手が少ないため、個々のテナントとの関係性が大切だからです。
LTMというチームが野村不動産内で結成されたのも、顧客満足度を最大化することが目的でした。通常、テナント数が増えていくと、どうしても各テナントと密なコミュニケーションを取る時間は減少します。しかし、それでは近年の多様化する顧客のニーズの変化に対応できません。その点、野村不動産にはLTMが存在するため、どれだけテナント数が増えても、月1回程度の定例会議を継続して開催し続けています。
もちろん、事業を成長させる中で、効率化は大事なピースのひとつになります。しかし、野村不動産は「現場顧客主義」を掲げており、意見交換の場をなくすことは一切考えていないのです。
いくつかの倉庫を他社と共同運営していることも野村不動産のスタンスの現れだともいえます。共同運営することで他社の知見を吸収しながら、より良いサービスを提供できるノウハウを自社に蓄積しています。
赤澤氏
今回のインタビューを通じて、野村不動産が倉庫運営の核と捉えている「LTM」の取り組みと、その背後にある理念が明確になりました。稲葉氏、水上氏、清水氏のお三方はLTMでの業務を通じて、幅広い業種のテナントのニーズをリアルタイムで把握しているんですね。
LTMのほかにも、さまざまなチームがテナントを支援する。
稲葉氏
LTMの取り組みは、野村不動産が手掛けるすべての物流施設設計に影響を及ぼす重要な組織だと考えています。そこには、我々も自信を持っているため、これから設計される野村不動産の倉庫の進化にもぜひ注目してください。
水上氏
LTMで働くやりがいのひとつに、日々の業務の中で多くのテナントから生の声が聞けることが挙げられます。現場で働かれている方々の声が「物流業界の今」を最も描いていると思うので、そのフィードバックを参考にどんなニーズにも対応できる倉庫運営のサポートができればと考えています。
清水氏
物流業界は社会の影響力が高い重要な産業である一方、まだまだ多くの問題が山積みです。しかし、我々は物流施設の建設を通して本気で業界全体の問題解決に貢献したいと考えています。これからもLTMを通して、既存のテナントはもちろんのこと、将来的なクライアントの業務を最大化し、世の中の物流をより良くできれば幸いです。