Landportへのお問い合わせ

施設一覧

求人募集

物流効率化のキーワード、
パレット標準化の指針とは【前編】

物流業界全般

長年にわたって物流業界の大きな課題となっていたのが、パレットの標準化、一貫パレチゼーションの実現です。

そもそもパレットの標準化に関しては、1970年には輸送用平パレットのJIS規格に11型(1100×1100mサイズ)パレットが定められてはいるのです。かれこれ50年以上にわたっていまだにパレット標準化が唱えられること自体が、課題の難しさを証明しています。

パレットを運送に取り入れることで、物流の景色は大きく変化します。パレット単位で商品を運べば、荷役の労働負荷や、商品管理業務の効率化など、物流の引き継ぎ点で必要となる業務を大幅に削減できます。また、パレットの共同循環利用が実現すれば、無駄な廃棄物の削減にも役立ち、環境対策としての取り組みにもつながります。

まさに良いことづくめのはずなのに、なぜそれが実現しないのでしょう。また、現時点の取り組みはどうなっているのでしょうか。

長く解決できない課題だったパレット標準化

パレット標準化やパレットの共同利用は、「古くて新しい課題」などと評されてきました。早くからユーロパレットという標準サイズ、共同再利用のスキームが整えられた欧州の事情とは違い、日本ではまず業界や企業ごとの物流スキームが先行して組み上げられ、そこに当てはめるため11型以外の多様なパレットが数多く市場に定着してしまったという事情が、その後の標準化や共同利用を推進する上での大きな障害となったことは間違いありません。せっかく用意したパレットや、せっかく構築した物流スキームを見直して再編するのは、確かに大きなコストと労力が必要ですから、現状維持となってしまうケースも多いようです。

また、トラックの積載効率を少しでも上げるために、荷主がパレット荷役ではなくばら積みを求めるといった慣習も、パレット標準化の大きな障壁です。確かに、パレット単位の物流では、パレットの体積の企画に納められない分だけ、トラックに積める荷物の量は減ってしまいます。また、あくまでも「標準」パレットであるために、外装サイズによってはパレットの積みつけ時の無駄が発生することでも、積載量が減ってしまいます。多様な商品があるのですから、すべてを効率的に標準パレットに積み合わせるのは、もともと難しいことなのです。こうした、さまざまな「言い訳」でパレットの標準化、一貫パレチゼーションが実現しない状況も続いてきたと言えます。

しかし、こうした課題があるのは認識しながらも、まずはパレット標準化を共通の目標としていくことが求められています。物流の効率化は義務となりました。物流現場での荷物のばら積み、ばら下ろし、手荷役の発生は、「荷待ち・荷役時間の2時間ルール」から、さらに厳しい基準での作業時間削減に取り組まなければならない物流業界にとっては、もはや悪しき慣習でしかありません。荷室いっぱいに詰め込まれた商品を手下ろししていては、とても法令で定められた荷役時間の効率化など実現できるはずもないことは明白です。

かつては、ばら積みが慣習化していた軽量の菓子類や即席麺類などでもパレット活用が進められるなど、荷主の意識も確実に変化しています。個社の利益にこだわった物流は市場から排除され、持続的な物流維持のためにどう取り組むかで物流品質が問われる社会となれば、一貫パレチゼーションもますます拡大していくはずです。

ついに取りまとめられたパレット標準化の指針

こうした物流でのパレット利用への意識の変化は、政府や各関係機関の粘り強い呼びかけと、物流危機という眼前の難題がもたらしたものだと言えます。

国土交通省は、政府、民間団体、物流事業の有識者を集めた「官民物流標準化懇談会 パレット標準化推進分科会」を2021年9月から開催、パレット標準化、共同利用の実現を物流対策の中核に位置付けて、討議を続けてきました。12回にわたる分科会での検討結果が、2024年に「最終取りまとめ(案)」として整理されるまでに至っています。今後推進されるパレット標準化は、これまで長くゴールの見えなかった取り組みでしたが、最終取りまとめでは、具体的な目標値・KPIを設定することで、2030年に向けたロードマップを指し示しています。

それによると、2030年度のパレット生産数量に占める標準仕様パレットの割合50%以上(2022年度は26%)、レンタルパレット保有数量5000万枚以上まで増やす(2022年度は2651万5728枚)ことや、パレット標準化による成果として1人あたりの年間荷役作業時間315時間以下(2020年度は375時間)などが具体的な数値目標として定められました。物流業界に携わる関係者全員で、今後はこのゴール目指して歩きはじめなくてはなりません。

次項では、この目標達成のために必要な具体的な取り組みを、この「最終取りまとめ(案)」から紐解きます。

一覧へ戻る